「くすりや」の「現場」

薬屋が見た、聞いた、考えた、さまざまなことを書いていくブログ。「ブログに書いてある情報は一般的なものです。ご自身に合ったものにするにも、受診している医療機関のスタッフ、かかりつけの薬局の薬剤師に相談しましょう。」正論でぶっ叩かない医療者に!

PGF2α誘導体製剤の紹介とまぶたへの色素沈着の機序

 今回の記事の始まりはTwitterで「プロスタグランジンF2α誘導体について調べる」といったことから始まっています。

 

 ★そもそもプロスタグランジンとは

 非常にざっくり説明すると

 体中のいろいろなところで、様々な作用を示す物質。

当たり前すぎますね。

 プロスタグランジンにはいろいろな種類があります。

 

プロスタグランジン - Wikipedia

ここは書くのが面倒なのでwikipediaの資料を参考ください。一般の方が読んでもそこそこわかるようにまとまっています。

 様々な作用があるのがプロスタグランジンE2ですが、今回、取り上げるのがプロスタグランジンF2αです。平滑筋の収縮を起こします。

 プロスタグランジンF2αそのものは既に陣痛促進剤として販売されています。誘導体(ある物質の主要な構造を変えずにいろいろな官能基を差し込んで利用しやすくしたもの)は緑内障・高眼圧症の治療に使われています。今回は、これらの物質がまぶたの色素沈着やまつげを伸ばしたり濃くするのはなぜかというところを説明します。

 

★どんな薬がある?

 ラタノプロスト 商品名キサラタン

 ビマトプロスト 商品名ルミガン、グラッシュビスタ

 トラボプロスト 商品名トラバタンズ

 タフルプロスト 商品名タプロス

 イソプロピル ウノプロストン 商品名レスキュラ

配合剤も発売されています。

 すべてチモロールとの配合剤で

   ラタノプロスト 商品名ザラカム

   トラボプロスト 商品名デュオトラバ

   タフルプロスト 商品名タプコム

緑色で書いている商品にはジェネリック医薬品があります。

 

 

ビマトプロストを除いてプロドラッグの形で販売されています。

点眼して、目の中の角膜にあるアミダーゼにより分解されて活性を示します。

そのままだとしみて仕方がなく、使用に耐えられないからです。

 

 眼内でFP受容体(プロスタノイド受容体の一つ)に作用して、そこから効果を示すとされるが、それだけではなくFP受容体からの働きかけで体内でプロスタグランジンが産生されEP3受容体(プロスタグランジンEP受容体EP3サブタイプ:プロスタグランジンE2がはたらきかける)に働きかけることで眼圧が下がる効果があるとも考えられています。

 →プロスタグランジンE2にも眼圧降下作用があるのではないかという説があります。既に、動物実験では眼圧降下作用があるとされるものもあります。

★なぜまぶたで色素沈着する?

2.の論文によると、以下のように推定されます。また、この副作用はす べての プロスタグランジン誘導体製剤に共通する副作用と考えられます。

 

 ラタノプロストおよびイソプロピル ウノプロストンではプロスタグランジンE2の分泌が促進され、

それが皮膚のメラノサイトに働きかけてメラニンが産生されるとされています。

 また、ラタノプロストでは、プロスタグランジントランスポーターにおけるプロスタグランジンの 細胞取り込みを抑制

→プロスタグランジン が持続的にメラノサイトやまつげの毛根細胞を活性化

→まぶたの色素沈着や多毛を引 き起こす

前述の、FP受容体へ作用からプロスタグランジンが産生されることで、皮膚への色素沈着が起こることを考えると、FP受容体に働きかける度合いの低いイソプロピル ウノプロストンでの色素沈着の副作用報告が少ないのは合点がいきます。

(各薬剤の承認時及び使用後調査における副作用報告において、イソプロピル ウノプロストンが桁違いに報告数が少なかった)

 

 今回調べたことから、プロスタグランジン誘導体製剤を点眼する場合は点眼後、顔を洗えることが望ましい(吹いても効果的だが、皮膚に薬剤がある限り作用し続けるという記述があるので、流してしまう方が安全と考えました)ので、点眼後の刺激や充血も考慮すると

 入浴前(できれば寝る前の入浴)の点眼がベストで、

 洗顔前が続きます。

 

 なお、プロスタグランジン誘導体製剤の副作用でまつげが太くなったり成長が早くなるのを利用してまつげに特化させたグラッシュビスタという薬があります。使用する場合はまつげの根元に付けないようにしましょう。(まぶたへの色素沈着があります)もともと、美容目的ではなく、抗がん剤の使用などでまつげが少なくなった人のためのものがもとになっています。

 

参考にしたページ

2010年3月3日(水) 第320回 関西眼疾患研究会特別講演

1.「PG受容体を介した眼圧制御機構の謎!」

相原 一先生(東京大学大学院医学系研究科外科学専攻感覚運動機能医学講座眼科学)

https://view.officeapps.live.com/op/view.aspx?src=http://www.ophth.kpu-m.ac.jp/wp-content/uploads/2010/05/title20100303.doc

2.日医大医会誌 2012; 8(2) ―綜 説― 緑内障治療薬としてのプロスタグランジン F2α 誘導体製剤 (プロストン系およびプロスト系)の特性について

https://www.jstage.jst.go.jp/article/manms/8/2/8_134/_pdf

各薬剤の添付文書とインタビューフォーム

EP2アゴニスト製剤に関するライセンスおよび共同開発契約締結について(宇部興産)

http://www.ube-ind.co.jp/japanese/news/2011/2011_20.htm

学位論文要旨 東京大学 

http://gazo.dl.itc.u-tokyo.ac.jp/gakui/cgi-bin/gazo.cgi?no=124898

論文

http://gazo.dl.itc.u-tokyo.ac.jp/gakui/data/h20/124898/124898a.pdf

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