「くすりや」の「現場」

薬屋が見た、聞いた、考えた、さまざまなことを書いていくブログ。「ブログに書いてある情報は一般的なものです。ご自身に合ったものにするにも、受診している医療機関のスタッフ、かかりつけの薬局の薬剤師に相談しましょう。」正論でぶっ叩かない医療者に!

国民生活センターが葉酸サプリメントに容赦ないツッコミを入れている

  ネットで「葉酸 サプリ」と検索するといろいろなのが出てきて、何を買っていいかわからなくなりますね。

 本来、サプリメントは必ずしも飲まなくていいのですが、妊娠1ヵ月前から妊娠中と一定の期間必要となるのが「葉酸」。新生児の神経管欠損症を予防するために、妊娠前から妊娠期間中(特に初期)サプリメントでの服用を推奨しています。米国予防医学専門委員会(USPSTF)によると、妊娠適齢期期間中のサプリメント服用を推奨しています。アメリカの場合は、葉酸のサプリメントを飲む習慣がついていないため神経管欠損症の発生が減っていないことから推奨されるようになりました。

 

 赤ちゃんの正常な発達に必須の葉酸、安全確実に摂りたいですね。ただでさえ妊娠期間中はさまざまな風説や根拠のない情報を流してくる人がいる上に不安になりやすい時期ので、どの情報が正しいのか心配になりますね。こういう情報を流してくる人の大部分は善意で(伝える内容が本当に正しいかの検証の有無にかかわらず)やっているので、無碍に遮断しにくいですね。

 

 この場合、相談相手としてベストなのが妊婦健診でかかっている医療機関(産科)の医師です。あなたの妊娠の状況や健康状態を把握していますし、妊娠、出産に関する知識もあります。もともと持病のある方が出産する場合、もともとの持病の主治医も相談相手として適切です。(持病の主治医と産婦人科医が連携しているでしょうし) 

 

 ネットで調べるのはあまりおすすめできません。(じゃあこのブログも怪しいのかという話になりますので、根拠を示した記載があるものは個人のブログであっても参考にしてもいいと思います。)

 調べるなら、官公庁や医療機関(アドレスに「go.jp」「ac.jp」「or.jp」(医療法人)があるところです)のサイトにしましょう。本日の記事の参考にしているサイトもおすすめです。(調べるのが大変ならば「go.jp」のみでOK)

 

本文最後の参考にしたサイト、とりわけ

胎児の正常な発育に役立つ「葉酸」を摂取できるとうたった健康食品(発表情報)_国民生活センター

(詳細な調査結果、調査・分析方法報告書は

http://www.kokusen.go.jp/pdf/n-20110526_1.pdf

で見られます)で一刀両断にしてくれています。消費者に安全な商品を提供するためですので、これぐらいしっかりとした調査をすると商品の信頼性が高くなります。(判定根拠もしっかり報告書に書かれています)

 今回は、こちらの調査について更に解説を加えます。

 

国民生活センターの調査で使用した健康食品です。

東京・神奈川の大手ドラッグストアの店頭で確認できた商品、楽天市場、Yahoo!ショッピング、Amazonにおいて「葉酸」で検索し複数のサイトで確認できた銘柄。

 

つまり、そこそこ販路の広い葉酸のサプリメントです。

そして、報告書に「検体購入」とあるように、実際に店頭やネット上にある商品を購入しています。メーカーが検査に合わせた商品を提供していない、抜き打ち検査です。

 

当時調べたのが下記の銘柄。

 

1.ディアナチュラ 葉酸 400μg(アサヒ フードアンドヘルスケア)
2.葉酸 400(井藤漢方製薬)→葉酸400 Ca+Feプラス、葉酸+マカに変更
3.LIFE STYLE 天然・B群マルチビタミン B-50 コンプレックス(エープライム)
4.ネイチャーメイド Folic Acid 葉酸 200μg(大塚製薬)
5.ビタミンB群+葉酸 Vitamin B family + Folic acid (オーガランド)
6.Folic acid 葉酸(オリヒロプランデュ)
7.葉酸たっぷり凝縮粒(グリーンメディカル)
8.葉酸(健康フーズ)
9.葉酸(小林製薬)
10.バイオン3 BION3 (佐藤製薬)
11.FOLIC ACID 葉酸(大創産業)
12.葉酸(ディーエイチシー)
13.たんぽぽサプリ 葉酸+鉄(ティーライフ)
14.Vitalcares Folic Acid 葉酸(400μg)(日本ダグラスラボラトリーズ)
15.MVP 葉酸+ヘム鉄(ネイチャーラボ)
16.葉酸タブレットEX(FOLIC ACID TABLET EX)(バイオセーフ)

17.緑の小粒 葉酸プラス鉄(ヘルスファーム)
18.セルフコントロールシリーズ 葉酸+鉄+銅(補完医療製薬)
19.葉酸サプリ(ヤマノ)
20.葉酸粒(山本漢方製薬)
21.緑豆まるごと葉酸(シナジーカンパニージャパン)
22.サーモン オメガ-3-ホレート(日本ファミリーケア→キューブヘルス)
23.葉酸+鉄(パル)
24.ピジョンサプリメント 葉酸プラス(ピジョン)
25.HEALTHY-One (FOLIC ACID)葉酸(美高商事)
26.葉酸+鉄+DHA(ユースモア)

黒字は現在も販売されているものです。

 

標準の定量法で調査して問題のない含有量だったもので現在も販売されているもの

(一部、含有量は規定量あるものの、有効期限内に含有率が低下して、規定を満たさない可能性があるものがあったので、そちらは除外しました。)

 

1.ディアナチュラ 葉酸 400μg(アサヒ フードアンドヘルスケア)
2.葉酸 400(井藤漢方製薬)→葉酸400 Ca+Feプラス、葉酸+マカに変更
3.LIFE STYLE 天然・B群マルチビタミン B-50 コンプレックス(エープライム)
4.ネイチャーメイド Folic Acid 葉酸 200μg(大塚製薬)
5.ビタミンB群+葉酸 Vitamin B family + Folic acid (オーガランド)
9.葉酸(小林製薬)
10.バイオン3 BION3 (佐藤製薬)
12.葉酸(ディーエイチシー)
14.Vitalcares Folic Acid 葉酸(400μg)(日本ダグラスラボラトリーズ)
16.葉酸タブレットEX(FOLIC ACID TABLET EX)(バイオセーフ)
18.セルフコントロールシリーズ 葉酸+鉄+銅(補完医療製薬)
19.葉酸サプリ(ヤマノ)
22.サーモン オメガ-3-ホレート(日本ファミリーケア→キューブヘルス)
24.ピジョンサプリメント 葉酸プラス(ピジョン)

20.葉酸粒(山本漢方製薬)に関しては、国民生活センターの検査で定量したところ含有量が十分になるように改善される前の商品で検査したようで、改善後の商品では問題ないという自社内検査結果があります。→判断は保留ですが、客観的な評価を待ちます。

大手のメーカーのものは全て残っています。

 報告書内では「体内での吸収、崩壊の具合(日本薬局方に準じた方法)「成分表記の順番」「一日あたりの上限服用量」などの記載について調査報告があります。容赦ありません。

  すべての商品について、「葉酸」のうち「モノグルタミン酸型の葉酸」(健康食品に含まれるもの)と「食事から取れる葉酸」との区別がなかったので区別して記載するよう指導しています。

 商品の原材料に「葉酸」と書かれていないものについて、葉酸含有量を調べ、その殆どが「モノグルタミン酸型葉酸(食事で取れるのとは違う、より吸収しやすいもの)」と報告しています(だいたい97%以上)。「合成葉酸」「天然葉酸」という宣伝文句を使っている商品についても「その殆どが同じモノグルタミン酸の型葉酸」です。

 商品包装に記載されている表記にも厳しい目を向けています。

1日最大摂取量の記載がないものが多い。

1日摂取量を守るようにという提言がある商品が1/3しかなかった。

成分表記において、法で定められた記載順序になっていないものが2銘柄あった(今も改善している様子がありません)

 これらの報告から、消費者、販売する企業、行政への提言を行っています。 

 

国民生活センターが消費者に対して出している提言をざっくりまとめると

1.食事で摂れる葉酸とサプリメントに含まれる葉酸は別物と考えましょう

2.妊娠前後など、通常よりも多くの葉酸を必要とする場合を除いては、食品で摂取することを前提にしましょう。

3.用途に応じて選択するサプリメントは変わってきます。

ビタミン | 日本人の食事摂取基準(2015年版)より | 栄養成分ナビ

 

参考にしたサイト

 

国立健康・栄養研究所 「健康食品の安全性・有効性情報」葉酸

http://hfnet.nih.go.jp/contents/detail652.html


平成 15 年度厚生労働科学研究費(効果的医療技術の確立推進臨床研究事業) 日本人の水溶性ビタミン必要量に関する基礎的研究

http://www.shc.usp.ac.jp/shibata/4-7.pdf

胎児の正常な発育に役立つ「葉酸」を摂取できるとうたった健康食品 国民生活センター

http://www.kokusen.go.jp/news/data/n-20110526_1.html

 

www.afpbb.com

 米国予防医学専門委員会(USPSTF)は米国医療研究・品質調査機構(AHRQ)の独立委員会で、検診や予防医療の研究レビューを行って米国政府の推奨グレードを作成します。

 

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