「くすりや」の「現場」

薬屋が見た、聞いた、考えた、さまざまなことを書いていくブログ。「ブログに書いてある情報は一般的なものです。ご自身に合ったものにするにも、受診している医療機関のスタッフ、かかりつけの薬局の薬剤師に相談しましょう。」正論でぶっ叩かない医療者に!

飲み残しを持っていったら返金?→ありません!

某TV番組で「飲み残しを持っていって、その薬が有効期限内だったら返金できる」と言っていましたが、それは絶対にありません。

 

 

 

 

 

1.患者さんに渡した時点で、その有効期限は無効

 製薬企業で製造後、医薬品卸を通して薬局では温度や湿度、光の照度の管理がなされています。しかし、患者さんがそれを確実に遂行されている保証がないからです。他の患者さんに使用できる保証がないので、捨てるしかありません。

 

2.飲み残す=医師の治療計画に変更が起こる可能性

 薬の処方はものだけの問題ではありません。

医師による薬物治療が遂行されていないので、治療計画の前提が崩れます。治療計画の修正が必要になります。そこで医師は「自分が立てた計画に無理があった可能性がある」と考えます。実行できなかった患者さんを責めるのは治療にマイナスになることも認識しています。

 

 そして、診断し治療計画をたてることができるのは医師のみです。

 医師に怒られるからと言って、隠していると、その薬を飲んでいるという前提で治療計画を立て続けるので、うまく進行しない治療計画になります。飲んでいないのに飲んでいるという前提で治療することで、間違った治療につながっていきます。間違った治療ということは、効果が出すぎたり出なかったりと想定外のことが患者さんの身に起こることになります。

 

 「患者は医師には恐れ多くて何も言えないのだから、察して欲しい」では正確な治療は難しいです。質問されなくても、薬の飲み忘れがある場合は医師に報告をお願いします。もしも、患者さんが自分で言うのを躊躇する場合は、薬剤師や看護師に相談するといいでしょう。

 医師と患者の意思疎通がうなくいくことは、治療に大きなプラスになります。飲み忘れをうまく伝えられなということは、それ以外の症状や体調変化についてもうまく伝えられていないのではないか?と考えます。

 かかっている医療機関の看護師の場合、自分の所属先の医師の性格もある程度理解している可能性も高く、うまいこと医師と患者の人間関係を調整することには長けています。信頼できそうな人を選びましょう。

 薬剤師の場合、もともと疑義照会という薬剤師特有の業務で医師と接していますし、あとに書く調剤・製剤上の工夫や生活に合わせた服用時間の設定などの知識は薬剤師の専門性でもあります。

 薬剤師が何も出来ないわけではないということは、次の項目以降に書きます。

 

 

3.飲み忘れの原因や飲み忘れた薬によって解決方法はさまざま

  薬の飲み残しが起こるのは、いろいろな理由があります。

 ただ単に数回程度忘れる、というのは誰しも起こりえます。

 体の機能の低下によって飲めない場合 →飲めそうな剤形に変更する

 飲み込む機能が落ちた場合

 口の中で溶けやすい薬に変える→処方の書き方にもよりますが、薬剤師による判断も可能な場合があります。嚥下機能の低下により、口腔内崩壊錠にしたことは医師に報告するのが望ましいです。

 

散剤にしてゼリーと混ぜて飲み込みやすい形にするなど、、薬剤師の服薬指導でなんとかなる場合もあります。この場合もトレーシングレポートの対象です。

 

 生活リズムと服用時点が異なる場合 

 1日3回食べない人に毎食後に薬が出る場合

 その薬が食事に影響する薬かどうかで変わってきます。

2交代制の人に「夜寝る前の処方」→処方する薬の選定と、服用時間の詳細な説明が必要です。

 

 薬が高くて調節してしまう→安い薬への変更

 

副作用がもとでのめない 効果とのバランスで処方が変わります。

患者が飲みたくないと言っている→医療者との関係が悪い場合もあるので、話し合いです。

 

 薬剤師による調剤の工夫でなんとかなる場合と、処方そのものを変える必要がある場合で対応は異なってきます。最初に薬剤師に聞くと解決方法を提案してくれます。

 

 その場合の、薬剤師の対応で必要になるのは、

 医師の報告が必要な場合は、なぜ必要なのかを説明することと思います。

「1日2回だと飲み忘れる」場合、1日1回の薬に変えるなどする場合は、処方の変更が必要です。それは、医師の指示が必要です。薬剤師による対応で解決できそうな場合でもなぜ、それで解決するのか説明をしましょう。

 

 医療車に求められることは、正論でぶん殴らないこと。

医療者が患者さんに対して薬を飲めてないことを責めると、正直に話さなくなったり、優しく対処してくれるトンデモ医療に走る可能性があります。これらは、いずれも患者さんのためではありません。どんなことはあっても責めないのは医療者のメンタルが削られることもありますが、頭ごなしに叱った場合のリスクを想像すると、正論でぶん殴るのを引っ込めたほうがいい場合もあります。

 

補足:テレビ局に意見を出しました。

番組中、「飲み残しを薬局に申し出れば返金される」とありましたが、これは誤りなので訂正お願いします。そのような法既定は存在しません。

飲み残した場合の対処は薬によって変わります。
いずれにしても医師の立てた診断及び治療計画を患者が遂行できなかったことになります。

生活習慣病など、長期的に治療する疾患の場合は必ず医師に飲めなかったことを報告しましょう。別に患者を非難するためではありません。
医師自身が立てた計画が、患者にとって無理があった可能性があり、改良する必要があるからです。
薬が飲めない理由によっては、薬剤師の方がノウハウがある場合があります。

1.服用時点の工夫
生活に合った服用時点を提案する。
例えば、昼に飲み忘れやすい場合は、薬を飲む時間をずらせば解決する場合や、1日2回の薬にするなど方法はたくさんあります。

2.製剤の工夫
嚥下機能の低下などで飲めない場合、錠剤を口の中で溶けやすいものにしたり、
散剤にする。

3.患者さんの病識や病気に対する不安がある場合
医療者や介護者で話し合う必要があります。この場合は薬剤師でなくても解決できる可能性があります。

いずれにしても、薬を飲み忘れたことを医師に言うと叱られるから内密にして欲しい、というのは難しいです。チーム医療の中には、患者も主要なメンバーになります。本来は、医療者が患者に威圧感を与えるようなことがあってはいけ混ません。相互信頼の関係で治療は行われているので、患者さんも嘘をつかないでいただければ幸いです。
隠したくなる気持ちはわかりますし、つい飲み忘れることが有るのは百も承知です。

患者の側である視聴者に甘いことを言わず、誠実に番組を作っていただきたいと思います。

 

 

 

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