「くすりや」の「現場」

薬屋が見た、聞いた、考えた、さまざまなことを書いていくブログ。「ブログに書いてある情報は一般的なものです。ご自身に合ったものにするにも、受診している医療機関のスタッフ、かかりつけの薬局の薬剤師に相談しましょう。」正論でぶっ叩かない医療者に!

敢えて言おう!なぜ薬剤師はジェネリックを勧めるのか

 ジェネリック医薬品を薬局で勧められると思われます。

 

 なぜ、薬剤師がジェネリック医薬品を勧めるのか。いろいろな視点で説明します。

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1.国民医療費から見た視点

 国民医療費は増大していってます。高齢者が増えているからです。

といったら、外に出歩いている高齢者や施設に入居しているをイメージするかもしれません。実際は、亡くなる直前がダントツで多額になります。

http://www.mhlw.go.jp/shingi/2007/03/dl/s0322-11a.pdf

上記は高齢者の受診動向についての資料です。

 終末期は、なるべく命を絶やさないようにすると治療が施されます。よって、多額になります。こちらの額を下げれば国民医療費は確実に下がるのですが、

 命の選別をされているような印象にもなりますし、

 残された家族に与える精神的ダメージも大きいです。

 終末期に自分の家族を切り捨てた、となればその家族が後悔し、心身ともに病んでしまい、さらに医療費が増えることになります。

 そこで、命にまだ直接の影響を与えにくいところを節約して、なるべく多くの生命を守れるようにする政策が「ジェネリック医薬品の使用」です。

 若い人になるべく生活習慣病などの病気にならないよう努めるようはたらききかける方法もあります。これも限界があります。

生活習慣が悪いわけでもないのに、もともとの体質で生活習慣病になる人もいます(日本人は欧米の方に比べて糖尿病になりやすい)、

規則正しい生活を続けるのは息苦しいです。

 また、高齢化で増える疾患として認知症がありますが、これには効果的な治療法が見つかっていません。他の疾患を防いだとしても、他の高齢化による疾患にかかる治療費がかかります。

 そもそも、長生きすると年金などの社会保障費がかかります。なるべく長い期間働いて、年金に頼らない生活をすることが国からも求められています。しかし、死ぬまで働くにも限度があります。現時点での健康寿命は70歳程度です。国は健康寿命を延ばすことを目指しています。(健康寿命と寿命の差=介護や世話が必要となる期間を短縮させる目的です。さすがに、寿命を縮めることを行政がストレートに打ち出すことは出来ませんので、健康寿命を延ばす話題になります。しかし、回復の見込めない人に対する胃ろうや、終末期医療について国民に心構えを持ってもらう施策は行っています)

 個人差は大きいですが、80歳の人が30代の人並みの長時間働くことは難しいでしょう。また、30際の頃のような長時間労働に疲れて、働くことに嫌気が差している人も多いでしょう。

 

 

2.薬局の都合

 後発医薬品調剤体制加算というものがあります。

 薬局全体で使用される、後発医薬品が存在する薬のうち、後発医薬品を使用した割合によって加算があります。

 この4月からはこちら。

 <病院・診療所>

◆後発医薬品使用体制加算1(入院料の加算)
加算1:45点、後発医薬品使用割合85%以上
加算2:40点、後発医薬品使用割合80%以上
加算3:35点、後発医薬品使用割合70%以上(現行70%以上は42点)
加算4:22点、後発医薬品使用割合60%以上(現行60%以上は35点)

◆外来後発医薬品使用体制加算(処方料の加算)
加算1:5点、後発医薬品使用割合85%以上
加算2:4点、後発医薬品使用割合75%以上
加算3:2点、後発医薬品使用割合70%以上(現行70%以上は4点)

◆一般名処方加算(処方箋料の加算)
加算1:6点(現行3点)
加算2:4点(現行2点)

 

<薬局>

◆後発医薬品調剤体制加算(調剤薬局)
加算1:18点、後発医薬品使用割合75%以上(現行75%以上は22点)
加算2:22点、後発医薬品使用割合80%以上
加算3:26点、後発医薬品使用割合85%以上

◆調剤基本料の減額(調剤薬局):2点減算(新設)
【施設基準】
 次のいずれかに該当する保険薬局であること。
(1) 当該保険薬局において調剤した後発医薬品のある先発医薬品および後発医薬品を合算した規格単位数量に占める後発医薬品の規格単位数量の割合が2割以下であること。ただし、当該保険薬局における処方箋受付状況を踏まえ、やむを得ないものは除く。
(2) (1)に係る報告を地方厚生局長等に報告していない保険薬局であること。

 

 

 というのは、後発医薬品はたくさんのメーカーが存在し、患者の希望に応じて同じ成分の後発医薬品を複数置いておく場面がありえます。最近は改善されたものの、後発医薬品は1000錠包装しか売っていないなんてこともありました。14錠しか使わなくても、薬局は1000錠分の金額を医薬品卸(もしくはメーカー)に支払うことになります。さらに、薬局はメーカーに消費税を支払っていますが、患者には転嫁していません。

 病院のほうが点数が低いのは、病院は採用医薬品を決めていて、その範囲内での処方に限定されることが多いからです。薬局のほうが取り扱う医薬品の範囲が広いです。病院のほうがロスは少ないです。珍しい病気や症状の薬であっても、そのような症状の患者さんが集まりやすいです。専門的な医療を必要とする患者さんを一つの病院に集約しているからです。それでも非常に珍しい疾患の方も来るので、大きな病院であっても、一人にしか処方されない薬や、散発的突発的にしか使用されない薬があり、期限切れは起こりえます。

 

 薬局が医薬品卸から買う値段は、法律で定められていません。医薬品卸がメーカーから買う時の価格も、法律で定められていません。これらはそれぞれの企業の交渉によって決まります。薬局・医薬品卸によって価格は異なります。

患者さんにお出しする時の価格は国の法律により決まっています。誰に対しても薬価は同じです。しかし、薬局の機能や処方箋を受け付ける時間によって価格が変わってきます。当ブログでは何度も言いますが、薬の値段は薬というものだけで決まってはいません。物を正しく使えるようにするための個別の情報に値段がついています。

 つまり、

 医薬品メーカー → 医薬品卸

 医薬品卸 → 薬局・病院・診療所

の売価は資本主義的な取引で決まります。

 安定して長期間大量に購入してくれる、大きな取引先には売り主も気を配って安くしたり、流通が滞るようなことがあれば優先的に納入されます。あまり買ってくれないところの納入価は安くありません。

 なお、納入価と売価の差は今はあまりありません。物によっては納入した時点で赤字のものもあります。どこで従業員の給与や機械のメンテナンス費用を稼ぎ、なるべく長く薬局を維持し、地域の住民に医薬品を供給し続けることが出来るか。そのためには各種加算を積極的に取りに行くように努めるのは当然です。稼いで私利私欲に走るわけではありません。(時折私利私欲に走る人もいますが、それはどの業種にもいます)

 薬局で働く薬剤師や事務、栄養士などのスタッフも同様です。稼いだお金で地域の住民に還元すべく、自己研鑽をします。

 つまり、各種加算を得るのは、最終的に地域の住民に還元するためです。

 

3.後発医薬品に不安のある方へ

 それでも、後発医薬品に不安がある方には1つ方法があります。

 オーソライズド・ジェネリックです。

 先発医薬品を作るメーカーの許可を受けて、先発医薬品と同じ原料を使用したり、ものによっては製法(果ては製造工場)まで同じジェネリック医薬品です。先発医薬品のメーカーの関連会社や子会社が販売していることが多いです。

 

 国は2020年度までに後発医薬品使用割合を80%にあげたい。

 患者は先発医薬を使いたい(人によってはなるべく安く)。

 医師も先発医薬品を使いたい(昔の後発医薬品の品質に疑問を持っている人は特に)

 

これらの需要を「形だけでも」叶えたい人にはうってつけの医薬品です。 

 体裁だけ整えたい、非常に日本人向けの発想ですね。

 すべての医薬品にオーソライズドジェネリックがあるとは限りませんので薬局に相談を。

 

 

 

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