こんにちは。
では、医療従事者は禁煙を押し付けないようにしようという趣旨の記事を書きました。
なぜかって?
禁煙支援の目的は何でしょうか?
そう、「治療対象者の禁煙が続くこと」です。
確実に禁煙が続く方法は何でしょう?
それを考えれば、自ずと禁煙を押し付けるのは逆効果だと思うでしょう。
医療従事者がやっていることはあくまで「支援」です。
そう、「禁煙したいんですけど」と言ってきた悩める子羊である喫煙者を
「よーし!ぼくんところに来たから安心だ!君の禁煙を支援するよ!ズンドコズンドコ」
と温かい気持ちで受け入れるのが医療従事者です。禁煙支援を受けにきた人を、テレビアニメ版エヴァンゲリオン26話最終シーンのごとく周りの人は「おめでとう!」と祝福するのです。もちろん、禁煙支援プログラムを終えたら時も同様に祝福するのです。タバコを吸いたくなった時の拠り所になるのです。
禁煙補助薬「チャンピックス」の添付文書にもありますね。
「本剤の使用にあたっては、患者に禁煙意志があることを確認すること。」
禁煙補助薬はタバコをやめたいという本人がその意志を貫徹できるようにするために使用してくださいというものです。
では、そのために、医療従事者は、家族は、周囲の人は何ができるでしょうか。
効果的なことは
「禁煙している人の苦しさを理解し、努力を認め、禁煙生活が楽しいものにする」ことと思います。
ご飯が美味しく感じられるようになり、体重が増えます。
ニコチンが切れて、イライラします。
手にタバコがないので手持ち無沙汰になります。
そういった、患者の苦しみに対し理解を示し、新たな楽しみを示すのです。
これまたチャンピックスの添付文書の効能効果の欄にある通り、「ニコチン依存症の喫煙者に対する禁煙の補助」です。
そうです。
ニコチン依存症という薬物依存です。
しかも、ニコチン依存症の場合は、違法薬物と違う注意が必要です。
依存を引き起こす薬物が周囲に合法的に存在し、容易に入することができます。
周囲に喫煙している人が存在する状態で、自分がそれを我慢しなければなりません。
タバコを購入していても、禁煙していることを知っている人以外からはスルーされます。
禁煙前と同じ生活環境で治療をすることになります。
人間関係も治療前後で変わりありません。
たまたま通りかかった先で喫煙している人がいるという場面が山ほどある状況で依存を断ち切らなければならないという意味では修羅の門です。アルコール依存症の治療の難しさもここにあると考えています。
喫煙者が自ら望んでタバコを吸い始めたとは限りません。周囲の人が吸うから、自分だけ吸わないのはどうかと想って喫煙をし始めたという事例も多くあります。
「日本における年齢階級・学歴・医療保険別の受動喫煙格差」
http://www.jacr.info/publicication/Pub/m_20/m_20_1-5.pdf
学歴が高くなるほど喫煙者が減る傾向にあります。周囲の人が吸うかどうかで喫煙傾向に左右されるようです。職場の先輩がすっていたから吸ったというものも往々にしてあります。
また。タバコは職場などの人間関係を円滑にするツールとして使われている部分もあります。これは、お酒もそうです。
例えば、職場である特定の人にまだ非公式の段階の話を持ちかける場合、タバコ休憩は便利なツールになります。自然に呼び出せます。また、さり気なく気にかけた相手に「大丈夫?」とその場限りの相談をするときにも簡単に呼び出せます。(非喫煙者を呼び出す場合、呼び出している場面を見られると「何かあったのではないか」と職場の他の人が詮索する場合があります)
今は、メッセンジャーソフトを用いれば容易に特定の人と密談ができるようになりましたが、業務で自分専用の端末を所有しにくい人や端末を使用しづらい環境にある人をさりげなく呼び出すのは難しいです。(この問題も、業務中に端末を持つことを許され、会社用、近所用の半ば外面向けアカウントを切り替えられて、一定時間経過後はメッセージを消すことができればこの手の問題は解決するように思います。)
「この場限りの話」をする時にもタバコは使われます。(お酒も使われます)この場限りの話に案外重要な情報があって、それを知らないと仕事に大きな影響が出る場合があります。それを避けるために喫煙や飲酒をする方も多いと思われます。
(これが「男には男の付き合いがある」の正体なのですが、女性、特に勤務時間に制限のある方だとそういった事がある事自体不公平につながるので反発が強いでしょう。医療の話ではないのでこれ以上の言及は避けます)
敷地内禁煙は、こういった非公式の密談を避けるのに効果的ではないかと考えます。タバコ休憩を実質できなくするのですから。
医療従事者は化学物質としてのニコチンの害、離脱症状の改善だけでなく、こういった患者が暮らす環境を考慮した治療支援もすると効果的なのではないでしょうか。
中には「タバコを違法薬物にしよう」という主張をする人もいます。周囲に当たり前に存在するからニコチン依存症が起こるという考えなのでしょうが、現時点では危険です。
平成29年(2017年)現在の成人喫煙率は男性29.4%、女性7.2%です。完全に違法にしてしまうと、かなりの数がヤミで取引されたタバコを吸う事になるでしょう。反社会的勢力の力を強めることになりかねませんし、取り締まれる人数に限界があります。
2017年の喫煙率を考慮すると、30-49歳で10年前より10-15%程度低くなっていますし、20代男性の喫煙率が30%を切りました。30代以降で喫煙を始める人はほぼいませんので、違法薬物にするまでもなく、タバコの流通は減ると思われます。同時に、タバコ農家の転作支援も必要です。
責めるのではなく、支援する。
相手にするのは喫煙者ではなく、ニコチンである。
資料
成人喫煙率(厚生労働省国民健康栄養調査)
http://www.health-net.or.jp/tobacco/product/pd100000.html
成人喫煙率(JT全国喫煙者率調査)
http://www.health-net.or.jp/tobacco/product/pd090000.html
医療従事者向け
禁煙治療のための標準手順書第5版
http://www.j-circ.or.jp/kinen/anti_sm0
患者さん向け資料
受動喫煙対策 厚生労働省(健康増進法改正についても記載、敷地内禁煙についても)
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000189195.html
チャンピックスサイト(患者向け)
こちらのサイトは禁煙に対するツールも充実!
すぐ禁煙.jp(ファイザー提供)
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