「くすりや」の「現場」

薬屋が見た、聞いた、考えた、さまざまなことを書いていくブログ。「ブログに書いてある情報は一般的なものです。ご自身に合ったものにするにも、受診している医療機関のスタッフ、かかりつけの薬局の薬剤師に相談しましょう。」正論でぶっ叩かない医療者に!

報道ランナー特集「市内で唯一、分娩を扱う総合病院が…『分娩休止』を表明 戸惑う市民、背景にある「課題」」をみて 現在のメディアの医療報道の限界

headlines.yahoo.co.jp

 記事自体は1ヶ月程度で削除されてしまうと思われるので、どういう状況なのか文字にします。

tanba.jp

 兵庫県丹波篠山市(兵庫県の東部:兵庫県全体で言えば中部)にある兵庫医科大学の附属施設であるささやま医療センターで起こっていることです。ささやま医療センターでの分娩の扱いを中止したいという旨、丹波篠山市に申し出ました。

 そこの産婦人科は現在医師2名。報道ランナーでは副院長を務めるベテランの医師と研修医の2名とのこと。こちらの2名で月曜日から金曜日までの午前中の外来を回していて、その上いつ起こるかわからないお産を担当しているのです。まずこの時点でかなり無理があります。お産は全部が全部安全に進むとは限りません。「コウノドリ」を読んだり見たことがあればお分かりですが、もともと疾患のある妊婦の場合や、今までは順調だったのに急に激しい出血があったり、むしろ安全に生まれるのは産婦人科、新生児科などの医療従事者の努力の成果です。

 ささやま医療センターでの分娩をやめて、設備や資源の整った市外にある大規模の医療機関で出産するほうが安全なのではないかという兵庫医療大学の判断があります。

 そりゃそうですね。トラブルがあったときには医師がたくさんいるところのほうが交代で休んで心身の状態をいい状態に保ちつつ継続的に治療ができます。産科医だけで出産はできません。生まれたあとのお子さんの健康を守る小児科・新生児科の協力は必須です。ゆえに、お産をするところは少なくなるけれど、受け持ち範囲のお産の多くを担当することで、それぞれの周産期センターの実績が多くなり、スタッフの経験も豊富になるというのがお産の集約化です。

 医師だから何でもできるようになるわけではありません。医師になってからの勉強と経験が大事です。そして、交代で回すことにより、体力も回復できますし、学会に参加したり、日常生活をすることで生活視点を得ることもできます。

 今回の報道では、お産の集約化のメリットについては伝えられていたイメージがあります。ただ、どうしても患者側の気持ちを汲まなければならない、患者さんを悪者にする報道をしてはいけないのが昨今の報道です。産科の集約はメリットが大きいから受け入れてね!という報道ができないのです。

 さらに、気づいたのが休みの日に駆けつけてくれる医師についての患者の感想が

「夜中に電話してもちゃんとフォローしてくださるところは安心」

「わざわざ出てきていただいて。なにかあったらすぐ来てもらえると言ってもらっていて」

と医師に対して感謝したり、医師の過重労働を配慮する言葉がないのに驚きました。一般的に、他人が無理して対処していることに人は無関心なものですが、ここまで無関心なのかと驚かされました。こちらの患者さんは医師の過重労働を当然とまでは思っていないのですが、時間外に連絡できる、休みの日に来てくれる=医師の自由時間がなくなるという発想に思い及んでいないようなのです。それも、わざと想像していないわけでもなく、「わざわざ来てくれたんです」で終わっている。人間の想像力ってこんなもんなのか、と強く思った次第です。

 もしこれが、他の職種でも「他人が無理してやってくれたこと」に対して「顧客が申し訳ない気分にならない、そこまで発想が及ばない」のならば、無理やり働く側が仕事の受け入れを制限したほうがええのではないかと感じました。 

 

 

 

もしよろしければバナーのクリックお願いしますm(_ _)m

にほんブログ村 病気ブログ 薬学へ
にほんブログ村 

 にほんブログ村 病気ブログ 薬・薬剤師へ
にほんブログ村