「くすりや」の「現場」

薬屋が見た、聞いた、考えた、さまざまなことを書いていくブログ。「ブログに書いてある情報は一般的なものです。ご自身に合ったものにするにも、受診している医療機関のスタッフ、かかりつけの薬局の薬剤師に相談しましょう。」正論でぶっ叩かない医療者に!

企業の論理 対 医療の倫理

 たとえ営利企業であっても、持たねばならないモラルはある。

 

 今回は、営利企業であっても矜持は必要というテーマで書きます。

 

 薬局を運営する企業の不正請求や、ドラッグストアでのタバコの販売、科学的根拠のない医療情報を提供する出版社やインターネットコンテンツ企業。

 

 「利益を上げなければいけないので、仕方なかった。」

 「企業は、利益を上げなければならない。」

 

このように経営者は言います。

 

 しかし、破ってはいけない基本的なところはあります。短期的に利益を得られても、長期的に企業の信頼を損ねたり、一発でとどめを刺される事柄があります。それが、人の道に外れたことをすることなのです。

 

 特に、株式上場してしまうと株主は利益しか見ないことが多いです。長期保有者は企業の健全な経営を望みますが、投機的な買い方をする人にとっては短期的な利益による株価の上昇がメインです。(配当が増えるのも望んでおりますが)

 

 よく、「医療は利益を出してはいけない」とか「営利企業が医療をしてはいけない」といわれますが、それも違うと考えます。

 その利益を何に充てる、何によって利益を上げるのかが重要です。

社会的な貢献だったり、人々の健康につながることに利益を充てているとわかっている企業であれば、営利企業であっても、社会的に認められると考えます。

 例えば、大きな薬局チェーンが、赤字とわかって僻地に店を開ける

               利益を捨ててでもタバコを売らない

 

     出版社が、売れないとわかっていてもまっとうなな医学本を出す

          売れるとわかっていても、倫理的におかしな書籍は発行しない

 

 利益が大事とはいっても超えてはいけないラインが存在します。

それを超えさせないモラルが大事ですが、購入する人のモラルも必須です。

 トンデモ医療本を発行させないためには、根拠のない本を買わず、根拠のある本を買うのが一番です。いくら矜持を守れと言われても、赤字になって社員が路頭に迷うようなことになれば、人の道に反したことをしてしまいかねないのです。

 まっとうなものを、値切らない。これが大事です。

 タバコに関してもそうです。既存のタバコが売れない。ならば、別の手法でタバコを製造すればいいという発想で生まれたのが電子タバコではないでしょうか。タバコをなくせと言っている人は、タバコ会社に勤める人の雇用を考え、提案するところまで行くといいのではないでしょうか。若い人はまだ簡単に雇用されます。問題は、中高年以降の人です。彼らが家族を養える他の職業を見つけられることで、タバコ会社は安心して消えることが出来るでしょう。

 そして、忘れてはならないのは「製薬企業」も「医薬品卸売業」も上場企業です。彼らも、新しい製品(や希少疾病用医薬品:利益は出にくい)を生み出す原資を作るべく、薬を売り込んでいます。売上のために適正使用からかけ離れた使い方になったり、効果を示す論文に過度に関わったり、改ざんする事例もありますが、自分たちの給料・設備投資・株主配当と並んで、希少疾病用医薬品にかけるお金を生み出そう、海外での疾病治療に薬を提供する目的で働いています。

 医薬品卸売業も、大口の取引先と小口の取引先では対応が変わるのはしかたありません。例えば、ある医薬品のメーカーからの供給が一時的に滞った場合、以前から継続して使用している医療機関への納入が優先されます。すでに使っている人がいるからです。また、大口の取引先への納入は切らすな、無理をしてでも納入しろという動くもあるかもしれません。そもそも、病院とそれ以外で取り扱っている支店が異なる医薬品卸もあります。

 

 利益を上げることと従業員の健康を守ることは相反することではありません。しかし、医療に関わる企業があまりにもえげつなくお金を儲けることは自分たちの首を絞めることになりはしないでしょうか。

 

補足です。

 健康や介護分野に乗り出しているとあるコンビニエンスストアチェーンの方の話を聞いたことがあります。(学会のシンポジウムにて)健康を打ち出すのであれば、タバコの販売をやめるべきではないか?と聞かれました。対し、その方は「タバコの売上が相当数ありまして・・・」と歯切れの悪い口調で返答していたのを覚えています。

 もしかしたら、タバコが売れなくなったら潰れてしまう店舗があるのかもしれません。(他のものが売れるようになる可能性もあります。それが、自分の店舗で販売されているものである確証がないので、販売を中止できないのではないかと推測します)

 

 「取れる利益は取る」姿勢が医療の矜持を持った人からは「ほれ見たことか」と思われるのですが、果たしてそうでしょうか。医療法人が営利を求めないとは言っても、人件費や設備投資を出せないほど赤字になってもその矜持を守れるでしょうか。

 国は、保険医療だけで食べられるようにしてほしければ、保険医療だけで食べられる診療報酬の仕組みを作るべきですし、お客も、その医療機関がまっとうなことだけで存続できるよう協力すべきです。

 人は、まっとうなことだけでは生きていけません。まっとうなことを好む人から見れば軽蔑することかもしれません。まっとうなことが好きな人にとっては「(自分の好きな)まっとうなことだけこの世に存在すればいい!」になったらいいのかもしれません。しかし、その矛先が自分の好きなものに向けられたらどうでしょう。困りますよね?

 要はバランスです。 

 

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