今回は、2020/8/5発行号の薬局新聞記事を掲載します。
こんにちは、薬剤師フィールドリサーチを担当している田村かおりで
す。今回は現場調査として実際に新しい薬局を取材してきました!「本
との出会いを提供できる薬局」という、今までにないコンセプトの薬局
として6月にオープンした大阪府豊中市の『ページ薬局』です。文字通
り書店と融合しており、なんと薬局で書籍を購入することができます。
ページ薬局を運営する有限会社フレンドの専務取締役・瀬迫貴士さんに
インタビューしました。
ページ薬局があるのは、阪急宝塚線・大阪モノレール線の蛍池駅から徒歩3~4分の線路沿い。薬局経営の基本情報としては耳鼻咽喉科の門前で、調剤を主体とした業務内容となっています。
ただ、薬局内に入った印象は写真のように “ 想像以上に書店 ” で、本好きの人がゆっくり本を選べる空間まであります。6名の薬局スタッフは全員が応募時点で「薬局×本屋」のコンセプトに興味を持ち、かなり本が好きな人もいるそうです。
もともと瀬迫さんは自らの読書体験から本に関わる仕事がしたいという意思があり、「ネット販売に押されて文化的なインフラである街の書店が閉店していく現状に残念な思いをしていた」と言います。薬剤師でありながらキャリアコンサルタントとしても幅広い仕事をしたいと思い、書店と薬局の融合を実現させました。
入口付近には地域に関する書籍と料理の本、投薬カウンター手前に絵本が置かれています。薬局を利用される方にお子様が多く、絵本の破損を防げるようにするためで、コロナ禍だけに感染対策として「手袋の貸し出しサービス」などを行われてます。この規模の書店では珍しく書籍の購入には図書カードも使えます。近辺には書店が少なく、薬局でありながら既に書籍を買うことを目的に来られる方もおられ、「書籍の取
り寄せ依頼も何件か頂いています」とのこと。取り寄せには2週間程度時間がかかるそうですが、それでも依頼するということはページ薬局の書店としての役割や、街に書店があることの大事さを理解されているからではないかと感じました。
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瀬迫さん (写真) に詳しく薬局のお話を伺いました。
――患者さんの反応はいかがでしょ う。 普通の薬局のつもりで入ってくるのか、 それとも 「薬局で本屋?」 みたいな感じでしょうか。
どちらのパターンもあります。ただし、あくまで標ぼうは『薬局』としての認知が先だっているように感じております。
――処方せんなしで本を買いにくる人はいらっしゃいますか?
今のところ本をお買い上げいただいている方は処方箋なしの場合が大半です。調剤待ちの間に本を手に取ってお買い上げいただいた方は片手でおさまる程度、というのが現状です。
――販売する書籍はどうやって選んでいますか?
特に細かな決まりなどはなく、置きたいと思った本を発注して販売するというような形です。初期在庫は私と書店コンサルの方との打ち合わせで決めましたが、今では例えば芥川賞や直木賞の候補作が発表されるとそれを置いてみようかなど、比較的自由に販売する本をスタッフにも選んでもらっています。
大きな括りでいえば、雑誌や漫画、それから健康に関するような本は販売しない、とは決めてはおります。
――健康関連にまつわる書籍を取り扱わないとのことですが、 どういったお考えからでしょうか?
「普段本屋に行かないような人にも、薬局に本を置くことで偶然の出会いを提供する」というコンセプトとの兼ね合いももちろんありますが、私がイメージした本屋さんのラインナップに健康関連の書籍は入っていませんでした。
――オープン間もないですが、 薬やサプリ販売など薬局の相談業務の流れで本の販売につながるようなことはどうでしょう。
先ほどお話しましたように、健康関連にまつわる書籍を現在は置いておりません。なので相談業務から何か特定の書籍を勧めたという事例はなく、しばらくはそういうケースもないと思います。
――本と薬をつなげるようなイベントなど、 今後の展開は?
本と薬をつなげるようなイベント、というよりも、書店らしいイベントを行っても面白いかもしれないとは考えています。
よく本屋さんであるのは読書会や読み聞かせ、それからトークイベントなど、こういったイベントを当局でもゆくゆくできれば、とぼんやり考えている次第です。
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偶然の書籍との出会い――。書店に行くことが多い私には、その感覚が手にとるようにわかります。それを味わえるような本の品揃えがあり、駅からのアクセスも良
いので大阪近辺にお住まいの方はもちろん、大阪伊丹空港からも近いため、COVID-19 の流行が落ち着いたら興味のある方は一度訪問されてみてはいかがでしょうか。
瀬迫さん、お忙しいところ取材対応ありがとうござ いました!
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