「くすりや」の「現場」

薬屋が見た、聞いた、考えた、さまざまなことを書いていくブログ。「ブログに書いてある情報は一般的なものです。ご自身に合ったものにするにも、受診している医療機関のスタッフ、かかりつけの薬局の薬剤師に相談しましょう。」正論でぶっ叩かない医療者に!

すぐ粉砕となる心理

 施設に入居されている患者さんの薬を調剤している薬局も結構あると思います。

錠剤を粉砕してほしい、それどころか施設で職員がすでに粉砕していた事例まであることがあります。

 その背景を聞くと

 1.患者さんが錠剤を吐き出す(薬を拒む)(認知機能が低下している方に多い)

 2.錠剤では飲み込むことができない

  (嚥下機能が低下している:この場合、口腔ケアを行う歯科医師の介入が効果的)

 3.胃瘻を導入している(チューブから薬を入れるので溶かす必要がある)

 

ことに大別されます。

 ところが、保険的には錠剤を粉砕しても嚥下困難者用製剤加算(80点)の選択ができないケースもあります。(それ以外の算定できそうな加算を考慮します)

 ただし、医師の指示により(処方箋に記載する)錠剤を粉砕するようにとあった場合は算定できます。

 例えば明らかに錠剤を粉砕したほうが量が少なくなる場合は飲み込めるようになりますので患者から見たら利益は大きいですね。

 例)

 ラシックス錠10mg 0.15g 

       20mg 0.08g

       40mg 0.16g

 同じ成分の量を細粒(4%:1gにつき40mg)で調剤すると 

      10mg 0.25g

      20mg 0.5g

      40mg 1g

10mgだと大きく量が変わらないのですが、他の薬も飲むことを考えると細粒剤で調剤するとかさが増します。

 少しでも量が少ないほうがいいと考える医療者・介護の担当者から希望が出るようです。

 

 

 ただし、粉砕すると効果が全くなくなる薬も存在します。

 主成分(効果をもたらす成分)が胃酸で化学変化を起こし効かなくなってしまう。
(腸で溶けるようコーティングをしてあります)

 効き目が持続するように、徐々に体の中で溶けて長い時間かけて吸収されるようになっている薬もあります。

 こういうのは粉砕してしまうと全く効果がなくなり、なんのために薬を飲ませているのかわからなくなります。この場合は処方した医師に疑義照会をするのですが、このとき薬剤師が用意しておく情報は

 1.粉砕するとどのように効果がなくなるのか

 2.代わりとなる薬にはどのようなものがあるか、その薬の特徴

 元の薬と同等の効果を得るために必要な用法用量

です。

 治療を維持、もしくは改善できる提案が肝です。

 

 薬剤師以外の医療従事者は、製剤や化学物質としての薬の特性を学んでいません。

ゆえに、なんとか薬を飲ませようとランソプラゾール口腔内崩壊錠をすりつぶしたりするのです。飲ませたところで全く意味がない状態は患者さんに利益がありません。

 

 化学の視点から見られる医療従事者としての薬剤師の立ち位置は貴重です。

(多勢に無勢でおしきられることも)

 

 

 

 

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