「くすりや」の「現場」

薬屋が見た、聞いた、考えた、さまざまなことを書いていくブログ。「ブログに書いてある情報は一般的なものです。ご自身に合ったものにするにも、受診している医療機関のスタッフ、かかりつけの薬局の薬剤師に相談しましょう。」正論でぶっ叩かない医療者に!

おそらく薬学と哲学を結びつけた初めての書籍「薬の現象学」

 今回は書評というか、感想を紹介します。

この記事自体、読みながら感想を書いているので(垂れ流し状態)、文章の構成がおかしくなっている(これはいつも)にご留意ください。

 青島周一著「薬の現象学 存在・認識・情動・生活をめぐる薬学との接点」

丸善出版のサイト

https://www.maruzen-publishing.co.jp/item/?book_no=304130

 

 執筆当時の著者は、こういう書籍を書きたかったのではないかと推測する。

最初はEBMの概念を純粋に学んでいた。現在もその思いは同じであろう。学んでいくうちに、現在の科学や医療に対する疑問を持った。反科学、反医療ではなく、医療や科学の概念を実現するのに現在のやりかたはそれを満たしているのか、もっといい方法はないかと思って学び、たどり着いたところに哲学があったのだと思われる。

 数々の書籍を書き、多くの記事を書いていく過程で著者の迷いや苦しみはあったと思われる。それを救ったというか、もどかしい思いを表現することができたのは哲学のおかげに思う。称賛と批判、両方を受けてきた。その中でも論文を読み、記事を書いてきた。その結果、利益にとらわれずに生まれたのがこの書籍だ。

 正直なところ、薬の勉強をしたい!という人には不向きな書籍だ。自分の仕事や生き方に迷ったとき、疲れ気味なときに読むにはおすすめする。完全に疲れたときに読むと大変かもしれない。

 

 このブログを書いている私は、薬剤師なのにそれほど本は読んでいない。積読だけが積み上がって部屋を埋めようとしている。しかし、薬剤師なのに化学よりも国語や社会のほうが得意というよくわからないところがある。(興味関心は幅広く散漫である。物理や数学のほうが好きなのだ)医療や科学の訳のわからんことをなるべく口語体で伝え、医療を頭のええ人に押し切られた、叩かれた世界にしないことを目指している。そ医療ブログなのに国語的内容のブログで、医療の知識が身につかないので薬クラでもない。医療系メディアに登場する気配もない。この本は、そんな自分には楽しく読める。

 

 哲学書なのにむちゃくちゃスラスラ読める。これは自分が薬剤師だからであろう。

 

 表層的に読むと、本書や著者の青島氏が誤解される可能性は十分にある。科学的に正しいことを勧めて悪い、という思考に固まりがちな医療者・科学者からは間違いなく叩かれる。

 科学的に正しいことは全て正しい、とブルドーザーのように人の心を踏みつけはいないか。一見健康に悪いとされる行動であっても、その人の生活の質を高めている場合がある。個々人を見れば、実はそう言う事例も多くある。それぞれの個人の生活の質を高めるためにエビデンスは存在するという認識を持っておく必要がある。

 しっかりと仕組み建てられた論文であってもその表現次第では恣意的なものになることも読む側も書く側も認識しなければならない。解釈は人の手のなかにあり、それはそれぞれの人間の知識だけでなく認識、感情によって大きく異なってくる。論文情報を読んで、医療従事者がほぼ同じように解釈しているのを見て、「同じ読み方をしているからぐるに違いない」と攻撃してくる人もいる。その背景には「解釈の中に専門家の情動が多く含まれているからに違いない」という気持ちがあるのではないか。解釈の中に情動が入り込むという認識を持った上で、解釈した背景を言葉で伝えるのもこれからの医療に限らず専門家に必要なことではないか。

 一旦常識を疑って、一呼吸おいて吟味してさらなる高みを目指すために読む本。立ち止まりたいときに定期的に読むのをおすすめします。

 

<こういう人におすすめ>

文学に慣れ親しんでいる人

いろいろな思考に触れたい人

現状に医療の進め方に疑問のある人

 

<こういう人は相性がちょっと>

専門においては、専門家の考えが正しい!と骨の髄まで浸かっている人

 

 

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