「くすりや」の「現場」

薬屋が見た、聞いた、考えた、さまざまなことを書いていくブログ。「ブログに書いてある情報は一般的なものです。ご自身に合ったものにするにも、受診している医療機関のスタッフ、かかりつけの薬局の薬剤師に相談しましょう。」正論でぶっ叩かない医療者に!

治療は専門家の判断と指示とその前提条件がセットになったもの

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 これ、薬局業界に対する意見というよりは医師の診断のプロセスに対する意見といったほうが正しいです。医師に意見したら理路整然とした回答が返ってくることまちがいなしです。なぜなら、診断という独占業務で医師は思考と判断を業務でたくさん行っているからです。

 

 診断とは

kotobank.jp

 医師は患者の様子(一挙一動、状態によって観察する箇所は異なる)を見て患者と対話をし、その中で必要な検査や応急処置を行い、見立てをします。診断の後に処置を行うこともある。診断は一度行ったら確定とは限らず、どんどん更新されます。

 定期的に受診して、少し話をしただけでも新たな診断が行われます。会話の中でも確認するべきポイントを押さえているからです。その診断の中には現状維持も含まれます。ゆえに、新たな診断が行われているとは患者が認識できていないことも多いです。患者の自然な様子から診断がくだされることが、正確な診断には必要不可欠です。

 ゆえに、堀江さんが「毎回同じなのに病院に行かなきゃいけないのは面倒」という感覚になるのは、自然に診察が行われている証左です。処方箋は「薬の処方期間中は、特段何もなければ処方箋に記載された薬を適切に服用しても差し支えないと考える」という保証書でもあります。むしろ、医師と対面せずに「急いでいるから薬だけ頂戴」と言って処方箋をもらうのは診断の仕組み上良くありません。そして違法です。

 

 処方箋には用法も記載されています。(保険請求をするので、実際口頭で医師が説明するのとは違う場合もあります。処方箋に書ききれない場合もあります。:この場合は医師の説明を優先します)

例)ロキソニン錠/細粒の添付文書上の用法、用量(文字に色を付けたのは筆者)

効能又は効果/用法及び用量

1.下記疾患並びに症状の消炎・鎮痛
関節リウマチ、変形性関節症、腰痛症、肩関節周囲炎、頸肩腕症候群、歯痛

通常、成人にロキソプロフェンナトリウム(無水物として)1回60mg、1日3回経口投与する。頓用の場合は、1回60~120mgを経口投与する。
なお、年齢、症状により適宜増減する。また、空腹時の投与は避けさせることが望ましい。

2.手術後、外傷後並びに抜歯後の鎮痛・消炎

通常、成人にロキソプロフェンナトリウム(無水物として)1回60mg、1日3回経口投与する。頓用の場合は、1回60~120mgを経口投与する。
なお、年齢、症状により適宜増減する。また、空腹時の投与は避けさせることが望ましい。

3.下記疾患の解熱・鎮痛
急性上気道炎(急性気管支炎を伴う急性上気道炎を含む)

通常、成人にロキソプロフェンナトリウム(無水物として)1回60mgを頓用する。
なお、年齢、症状により適宜増減する。ただし、原則として1日2回までとし、1日最大180mgを限度とする。また、空腹時の投与は避けさせることが望ましい。

実はロキソニンには頭痛の適応がないんです。

そして、赤字に変えた箇所は「調節ができる」箇所。診断によって変わる箇所です。

そもそも、添付文書は患者向けには書かれておらず、使用する医療従事者向けの文書です。上記の範囲内で患者の状態に応じて調節して薬を出してくださいというものです。

 

市販のロキソニンSの添付文書より

効能・効果

○頭痛・月経痛(生理痛)・歯痛・抜歯後の疼痛・咽喉痛・腰痛・関節痛・神経痛・筋肉痛・肩こり痛・耳痛・打撲痛・骨折痛・ねんざ痛・外傷痛の鎮痛
○悪寒・発熱時の解熱

用法・用量

次の量を、水又はお湯で服用して下さい。
年齢 1回服用量 1日服用回数
成人(15歳以上) 1錠 2回まで。
症状があらわれた時、なるべく空腹時をさけて服用して下さい。
ただし、再度症状があらわれた場合には3回目を服用できます。服用間隔は4時間以上おいて下さい。
15歳未満 服用しないで下さい。

 同じ成分なのに、使用方法が異なります。しかも、頭痛や月経痛にも使えます。しかし、飲み方の融通はあまり利きません。上記の飲み方以外で飲んで大きな副作用が出て身体に障害が残っても医薬品副作用被害救済制度の対象になりません。

 

 余談ですが、医療用医薬品のロキソニンにも市販の用法を適応させればいいのにと思いました。審査の方法が異なるのでしょう。

 

 一般の人は「どうせ同じ症状だから」と診察をとばして薬を求めますが、患者が気が付かないうちに医師は事前に診断していて、そのフィルターを通して薬剤師に薬の指示書としての処方箋を発行しています。

 

 忙しいからとか会社を休めないからと受診を遅らせたり、夜間や休みにやってほしいと考える人も多いです。そこまでやれるほどの人員がいないのと、体調が悪い場合や体のメンテナンスのためには休む習慣をつけることが国民の健康に繋がるという考えから、一般的な診療を行う医療機関は夜や日曜日は休みます。

 

 そして、薬剤師は薬を使用するポイントや相互作用や副作用の確認、薬の作用のチェックを行います。最近の薬は使うのにコツが要るものが多いです。自宅での治療の多くの割合を薬物治療が占めます。ゆえに、医師とは別の職種である薬剤師が必要となってきます。

 

 処方薬は薬という「もの」と「情報」(患者から集めるものと医療従事者から提供されるもの両方)が組み合わされた個別化された統合物であるという認識を持っていただけると幸いです。

 

 そして気になることが。

常備薬という表現。

偏頭痛など、いつ発作が起こるかわからないので持っている薬なら保険診療で薬を常備しておくというのはわかりますが、 

熱が出た時や風を引いた時の常備薬は市販薬でいいのでは???

 

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