「くすりや」の「現場」

薬屋が見た、聞いた、考えた、さまざまなことを書いていくブログ。「ブログに書いてある情報は一般的なものです。ご自身に合ったものにするにも、受診している医療機関のスタッフ、かかりつけの薬局の薬剤師に相談しましょう。」正論でぶっ叩かない医療者に!

【参加報告】2018/4/1 AHEADMAP x EBM倶楽部ジョイントワークショップ

 4/1(日曜日)に行われたAHEADMAP x EBM倶楽部ジョイントワークショップの参加報告をします。

 
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 今回は、ある患者さんの問いかけに対する答えを得るべく、処方提案を行う企画でした。とかく、論文を読める自分かっこいい!と誤解されがちな薬剤師によるEBM。しかし、今回は非常に泥臭い、血の通った処方提案につながっていました。

 

 

 今回のワークショップのメイン

 問題の定式化(PECO/PICOを決める)

 患者さんの考えや状態に沿った、エビデンスのある情報を読み取っての処方提案

 

 論文を検索するのはメインではありませんでした。なぜ、EBMを行うのか考えれば、当たり前です。いちばん大切なのは、患者さんのことを知ること、知ろうとすることです。

 患者さんのこと(経時的な疾患の状態や薬物治療歴、生活状況など、薬物治療に繋がる情報、治療に対する希望、人生における価値観)を知って、信頼関係が得られば、より精度の高い問題の定式化ができます。

 また、論文情報や薬理学有機化学の情報から、どういう結論に導くのかも。患者さんの価値観が尊重されます。(優先ではない場合もある)

 

 

 どんなワークショップだったのか 

 今回の参加者は約30名でした。参加者を5-6名のグループに分けます。

 最初は、参加者間の気分を緩めるべく、「処方提案について困ったこと、必要な準備」についてのワールドカフェ形式での話し合いがありました。

 

  ワールドカフェとは

ワールド・カフェとは? | ワールド・カフェ・ネット

 

 ここで、処方提案についてのイメージを膨らませた後に本題に入ります。

 

 

 本題では、SGD(スモールグループディスカッション:少人数による話し合い)でした。同じ題材を複数のグループで話し合い、それぞれのグループで出した結論とそれを導いた根拠を発表していきました。グループの参加者の意見をそれぞれ尊重して話し合いが進んでいきました。

 

 その前後には、論文のデータの読み方についての講義がありました。わかりにくい言葉を簡単に解説していました。

 大切なのは

 比だけではなく差も見ること

 10000人中10人に起こる症状を薬で10000人中4人に減らすこと と

 10000人中1000人に起こる症状を薬で400人に減らすこと

では減らす比率は 0.4 と同じですが、

 減らす人数は 6人と 600人で大違いです。

 同じ薬価の薬で考えると、後者のほうが価値が高いと言えます。

 

 それと、論文のP値は無視していいことの解説

 箱ひげ図の読み方

 がスッキリ理解できました。

 

気づいたこと感想

 ここでも、気づくことがありました。

 それぞれのグループが、複数の論文を読んで導き出した答えが違っているのです。

それぞれが、それぞれの着眼点を持って発表していました。薬価などのデータも含めて論拠を発表するところ、具体的に医師に提案をするシナリオを発表したところ、いろいろありました。そのどれもが、自分にはない着眼点で、尊重できるものでした。今後、お互いの着眼点を自分のものにして、より患者さんに沿った相談、服薬指導、受診勧奨、処方提案ができるのではないかと思います。

 

 そして、結論に導き出すためには多くの患者さんの情報が必要であることも実感しました。過去の検査値、患者さんの生活スタイル、外見・・・。

 

 こういったことを、実際に体感できるワークショップは非常に価値があります。それは、参加者が自分で参加したくて来ているというのも大きいと考えます。それと、SGD参加者がお互いの意見を尊重し、聞く姿勢があった、有るように仕向けたのも良かったと思います。これは、WSを作ったスタッフの方の作り方がうまかったのと、WSの目的がしっかりしていたのが理由ではないかと思います。スタッフの皆さんの大変な苦労が見て取れました。

 

 ただ、改善点もあります。WSは長いので、どうしても子育て中の女性が参加するのは難しいこと、やる気があまりない人も参加する社内研修にはもうひと工夫必要な印象がありました。今回の参加者は大半が男性でした。

 

 話はそれますが。メディアの役割は、一次情報へのアクセスを簡便にすることではないかと思いました。WSでも、同じ一次情報でも見る人の価値観というフィルターによって(今回のWSの患者像も薬剤師から見た患者像に過ぎません)変わります。同じ情報であっても、価値観の捉え方によって、行動がまるっきり違うという結果をWSで目の当たりにしました。

 客観的な情報で行動や捉え方が180°変わるのですから、メディアが自身の意見をわかりにくく混在させることは読者の目を曇らせるだけです。なるべく多くの一次情報を集めて、読者の判断材料を増やすのがメディアの仕事ではないでしょうか。 

 

 今回得たことの要約

 1.問題の定式化と、結論を導くためには患者情報を多く集め、患者さんをよく知ることが必須。

 2.客観的な情報だけでも、評価する人のフィルターによって答えが異なってくる。

 

 もっと多くの人に今回自分が体験したことを実感して欲しい。しかし、WSの性質上多くの人が参加するには限界がある。多くの人に知ってほしくて、この記事を書きました。

 最後にもう一度

 EBMで一番大切なのは、患者さんのことを知ること、知ろうとすること

 

 

 

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