「くすりや」の「現場」

薬屋が見た、聞いた、考えた、さまざまなことを書いていくブログ。「ブログに書いてある情報は一般的なものです。ご自身に合ったものにするにも、受診している医療機関のスタッフ、かかりつけの薬局の薬剤師に相談しましょう。」正論でぶっ叩かない医療者に!

ノルレボ錠0.75mg→ノルレボ錠1.5mg

 緊急避妊に使用されるノルレボ錠0.75mgについてのざっとした解説をします。

(2018.7.16 ノルレボ錠1.5mgに変更)

 

主成分 レボノルゲストレル

黄体ホルモン(プロゲステロン)と同様の作用をします。トリキュラー、アンジュ、ラベルフィーユという低用量ピルにも含まれていて、2007年には子宮内避妊システム「ミレーナ52mg(IUDに付加させて子宮内に挿入し避妊をするもの。5年間有効。経産婦向き)も発売されています。

 

1回服用量 2錠(レボノルゲストレルとして1.5mg)

     これは、低用量ピル1周期(28日分)の約78%の量です。

適応 緊急避妊

どういった作用を示すのか?

1.一度に多量の黄体ホルモンを体に入れる

2.脳から出てくる黄体ホルモンを出す命令を出すホルモン(黄体形成ホルモン)の放出を抑える(もう黄体ホルモンはいらないですよと言う状態になる)

3.黄体形成ホルモンが一度に多量に出ることで排卵が起こる(LHサージと呼ぶ。これが起こると24-36時間のうちに排卵が起こる)のだが、それがないことで排卵が起こらない、もしくは遅れる

4.排卵が起こらない間に精子の寿命(だいたい2から5日)がくる。排卵が遅れた場合でも精子がいないので受精しない。

5.妊娠阻止(これが最終的な効果)→ノルレボの効果の真のアウトカムはこれ

(どうやって効果判定するのか?次の生理が来るかどうか)

 

他にも受精しても着床しにくくすることで妊娠阻止できるという作用もあると言われています。(さほど子宮内膜が分厚くなっていない段階で黄体ホルモンが短時間に急激に子宮に分泌された上にそのおかげで脳から黄体ルモンを分泌する指令が来ず黄体ホルモンがでないので子宮内膜が厚くならない)

 

ノルレボはどれぐらいの期間効果を出すのか?

薬物動態から考えると

最高血中濃度を示す時間 2.88時間±2.03時間

半減期 24.72時間±3.49時間 これに5倍したものが作用する時間と考えると123.6時間 大体5日間 だが、脳から出てくるホルモンの作用を狙っているので多少効果の出現消失時間に差が出ます。

 

妊娠阻止率 72時間以内の服用で国内第三相試験で81%(1例/63例)

      海外では臨床試験で84%とされる。(16例/1198例)

      海外臨床試験では72時間を超えて服用した場合の妊娠阻止率は63%。

     

 

保管方法

40±2℃ 75±5%(湿度)で包装のまま6ヶ月有効成分量の増減なし

→鞄の中に半年包装のまま入れておいても問題なし(車の中で放置した場合は

保証できませんが・・)

 

食事の影響 受けない

→気がついた時点で即服用できる(排卵を阻止するのがメインの効果なので、早く服用した方が効果は高い

 

相互作用を起こす薬、サプリメント

 フェノバルビタール(フェノバール)、フェニトイン(アレビアチン)、プリミドン(マイソリン)、カルバマゼピン(テグレトール)、リトナビル(ノービア)、リファブチン(ミコブティン)、リファンピシン(リファジン)、グルセオフルビン(日本では販売中止)

 セントジョーンズワート含有製品

 

ノルレボの効果が落ちる可能性がある。

 

副作用について

国内臨床試験では72.3%(47/65例)に発生

消退出血 46.2%(30/65)

不正子宮出血 13.8%(9/65)

頭痛 12.3%(8/65)

悪心 9.2%(6/65)

倦怠感 7.7%(5/65)

傾眠 6.2%(4/65)

 

エストロゲン(及び類似物質)が含まれていないので血栓症のリスクはありません。

 

服用後に生まれてくる子供に影響はないのか?

→ノルレボの服用量では影響なし。

4mg/kg/日 というのはノルレボの1回服用量より圧倒的に多い量となります。

 

乳汁中に移行するか?

移行する。ただし、人間で異常が発生したとはいえない。動物では胎児損傷の増加があったという報告もある。服用後すみやかに移行し、服用後2-4時間でピークに達する。24時間後でピーク時の9%になる。服用後24時間は授乳は避ける。

 

主たる効果が排卵抑制効果なので、なるべく早く服用すること。

服用が遅れると、服用時点で既に受精している可能性が高くなります。

また、消化管の調子が悪く嘔吐や下痢をしている時の服用は効果が落ちます。

 

<ノルレボによる避妊が有効な例>

強姦によるもの

避妊具の破損、不正確な使用

<ノルレボによる避妊が適さない例>

授乳中の性行為(ミルクによる代替がまだできていない例)

本剤の成分に過敏症を起こしたことがある

肝機能が非常に低下している

 

 

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ここから個人の意見。

「ノルレボを市販化した場合の有効性について」

 事故や事件で望まない性行為をして望まない妊娠を避けると言う意味では市販化した方がいいかもしれない。

 ほんとうに必要であれば、購入者にその場で飲んでもらうのもありだ(早く確実に飲むためにも)。もし、購入した記録が店舗側に残るのが嫌なのであれば、自身でお薬手帳を持ち、記載して自身で持つ方法がありだと考える。(こういう点でアナログの良さが活かされる)

 作用機序上早く飲めば飲むほど効果は確実なので、医療機関が閉まっている時間も対応できる手段があった方がいい。婦人科も24時間開けろとなったらただでさえ医師不足で過重労働なのにさらに仕事が増えてしまう。

 

 事前に購入して、破損事故に備えるという考え方もある。しかし、事前に多量に購入する場合はDVを疑った方がいい。アレルギーでもないのにパートナーが避妊具の着用を拒む上に性行為を強要するとなったら完全にDVだ。

 「経口避妊薬が広く知られるとコンドームを使わなくなる」という言説はあながち嘘ではないと考える。性感染症を防ぐにはコンドームは効果的である。しかし、性感染症を他人ごとと考える男性は多い印象がある。男性の方が軽微だったりその後の体の機能に影響がない疾患があるためと、病気そのものが知られてないこともあろう。危険を冒してでも快楽に走るタイプ(なおかつ他者への想像力が自分の好奇心に勝る)の男性だとコンドームは使われなくなる可能性がある。女性が性感染症にかかった場合、潜在化したり将来の不妊につながるものもある。このあたりの配慮をしない男性とは関係をもつべきではない、いや一切の関わりを拒否した方がいい。

 避妊も性感染症もベストミックスですよ!一つの方法だけでは完全ではありません!

 

 警察や関係機関への通報システムを構築してたうえで販売者によるチェック、市販化すると「望まれない妊娠、出産」を避ける事ができるのではないか。これを第一義とするならば、ノルレボ市販化は利益のほうが大きいと考える。

 

 

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