今回は、高齢化や多剤併用で多くなってきた一包化調剤の作業を解説します。
0.残薬の確認、処方内に薬学上おかしな点はないか確認
時間がかかるのがわかっている場合は患者さんにその旨伝え、連絡先を確認の上薬の準備ができた時の対応を確認する。患者さんの希望を優先するが、他の患者さんの都合などもあって難しい場合があるのでその旨も伝える。
1.処方箋に記載の薬を集める
通常の調剤と同じ
こんな機械があり、処方内の薬剤が全て全自動錠剤包装機のカセットの中にある薬ならば薬を並べる必要はない。カセットの中に薬を入れる際に別の薬を入れてしまった場合はすべてが間違いになってしまうので注意(鑑査の時に錠剤に刻まれた刻印をきっちり見れば患者さんに違う薬が届くことはないが、やり直しに非常に時間が掛かる(一包化した袋を開ける→違う薬を取り出し正しい薬を入れて一包化するため)
(2018/6/9追記)
機械で行った場合、調剤にかかる時間は10分ぐらい(人間がその場にいなくても作れるのが利点ですが、
分包紙の交換
インクリボンの交換
錠剤が機械に挟まる
などのメンテナンスも必要です。また、カセットに入れられない薬もあります(錠剤が壊れやすい、保管に気をつけるもの、あまり調剤されない医薬品など)。
機械は優秀ですが、十分ではありません。
(追記部分終わり)
余談ですが、カセットに薬を入れる時も2人以上で鑑査してますよ
このような機械を導入できるのは
一包化調剤が多い
こういう機械を購入できるほどの財力がある
ところに限られますので、小規模薬局では設備されていないところが多いです。
むしろ設備されていないところのほうが多いです。大規模薬局です。
2.分包機の錠剤カセットに錠剤を入れる
で、一包化調剤で一般的に使われるのがこういう機械(これでも百万円近くします)
機械上部のマス目に錠剤を入れていきます。
勿論一包化に向いていない薬は分包しません(揮発する、湿気や衝撃に弱いなど)
入れ間違いをしないための工夫はいろいろやっています。
基本は「一包化調剤をしている人には声をかけない」
PTPヒート包装の薬が多種類だと指の爪の内側に包装が入って流血騒ぎになるので注意
3.1回分の包装に印字する内容を決める
患者さんが使う場面によって印字する内容は異なります。
患者氏名
服用時点(イラストやマジックによる線の場合も)
服用日
薬の名前や数
個人の家で、一包化した包装を飲んだ後処理する場合に名前があるのは個人情報保護の観点から困るという理由で氏名を入れない場合があったり
子供の場合、個人情報は保護したいが兄弟でいつ受診したのかわからなくなるので下の名前だけ入れて欲しいという要望もあります(ただし、小児の場合は一包化ではなく散剤の調剤がほとんどです)
施設入居者の場合、大抵は家族ではない施設の職員が薬を飲ませるので、その人が飲ませやすいようにして欲しい ちょっとした体調の変化でも調整しやすくして欲しい(多いのが便秘と下痢の時に下剤を付け外しできるようにして欲しいという要望)とのことで、下剤を別にして分包したり(テープのり、ホッチキス(誤飲注意)、テープで服用時点ごとに貼り付けます)ほんとうに様々な要望に応じて対処します。
3.自動分包機のスタートボタンを押す。
分包数、分包速度などチェックしてスイッチを押します。
機械が動いている間も油断はできません。錠剤の数が多い場合、一つの袋に入りきらなくて機械がストップしてしまうことがあります。
4.自己鑑査する
できあがった一包化調剤の薬について、中身と印字が間違っていないか自分でチェックします。
最近では上記のように薬の名前が印字されているものも増えてきましたが、
のようにまったく文字が書かれていないものや、白い錠剤に白い刻印という非常に見づらいものも多数あります。老眼が始まるときついです。ルーペや卓上の蛍光灯の世話になります。
5.他の薬剤師に鑑査してもらう
薬剤師がふたり以上いれば、4.と同じ作業をほかの人にやってもらって精度を高めることができます。が、お互い依存していると二人共スルーして間違った薬が渡ることがあるので注意です。
(2018/6//9 追記)
最近では、一包化した医薬品の鑑査もできる機械も登場しました。
こんなにでかいものだけとは限りません。
人の目が見るより時間がかかるのですが、人を拘束しないのと、機械で記録できるのが長所です。
しかしこういう機械を導入しているところは少ないです。
(ここまで追記部分)
というわけで、1人の調剤に1-2時間かかるのは当たり前であると思っていただけると幸いです。調剤の部分が機械化されても、薬剤師の責任という部分は消えませんので、1回は人の目によるチェックが入ります。鑑査を2回する場合の1回は機械であったとしても。
<一包化にかかるコスト(お金と時間)>
これだけのことをしても技術料は平成30年4月現在で
42日分以下の場合
1-7日 32点
8-14日 64点
15-21日 96点
22-28日 128点
29-35日 160点
35-42日 192点
43日分以上 220点
ちなみに、1日1回で3種類の錠剤を一包化した場合でも、1日4回の場合でも同じです。
(2018/6/9追記)
1日3回毎食後だと
1日分は3包ですが、30日で90包、90日で270包です。
1回の錠数が2錠だと180錠ですが、10種類ぐらいあると1000錠ぐらいを間違えずに入れているか確認する必要があります。その中に錠剤を半分に割ったものがあったり、白い錠剤で刻印がはっきりしないものがあるとなおさら手間がかかります。
さらに、施設の調剤で多いのが、便秘や糖尿の薬は別にしてほしいというリクエスト。こうなると包数が2倍3倍になります。これをぱぱっとできるでしょ!という人(なぜか医療、介護職の人が言う事が多い)が少なくないのでこの記事を書きました。
なお、分包紙とインクリボンのコストも洒落になりません。分包紙で1巻9000円ぐらいで、1巻で4500包作れるとして1包のコストが2円。機械の電気代やインクリボンを入れると結構なコストになります。
所要時間にも着目しましょう。
薬の入っている「包み」1回分に入っている錠剤がなにか調べるのにかかる時間を1包みあたり平均1-2秒と考えると
1つの包みに入っている薬が3種類で1日1回30日分で 90秒
(実際は包みを見やすい方向に整える、包みに入っている錠剤の刻印を覚える、思い返す、包みがいくつあるのか数える、印字されている内容を確認する(これは1包あたり1-2秒)と考えると)10分ぐらいは鑑査にかかります。
これが、10種類で1日4回毎食後と寝る前90日分だと、1包みの中にある錠剤すべてを確認するのに10秒ぐらいかかります。
10(秒)×4(回)×90=3600秒=60分-120分=1-2時間(実際は目がなれてくるのでもっとかからない。30分ぐらいはかかる)
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