医療における安全にはいろいろなアプローチがあって、
「難しいやり方をより正確にできるように支援する」方向と
「簡単なやり方で間違えてもフォローしやすいようにする」方向。
目標は勿論人間の体をより良い状態にする(疾患を治す、治らない場合でも生活に支障がなるべく出ないようにする)こと
だけれども、その目標を達成しやすい方法を治療によって、患者によって選べるようにするのが理想ではないだろうか。
例えば、外来で生活をしながら治療する疾患の場合は、患者が治療をする割合が高いので簡単なやり方で、
多少間違った場合でも取り戻せる方法の方が治療は成功しやすい。ただし、患者の性格により「高い目標に
たどり着くためにはどんな努力もいとわない」という人もいるので、ひとくくりにはできない。
入院する場合は医療スタッフが治療に深く関わるので、多少難しい方法であってもよりよい結果を得られる
方法に挑戦することがある。勿論、スタッフの訓練とコンディションの維持改善は必須だ。
最近、使い方が難しくなっている印象があるのが喘息の吸入薬。治療効果を高めたい、薬を気管に届けたいという
気持ちはわかるのだが、使いづらくて機関に届ける以前の問題になっている場合がある。そこで薬剤師の吸入指導
が入るわけだが、患者としては使用するのが面倒なので簡単に吸える工夫の方向に製薬メーカーは向かってほしい
という希望がある。他の分野でも効果は合格点だが、安全域が広かったり服用時点をあまり問わなかったり使用が
簡単な方向の薬の開発が治療をいい方向に向かうのではないか。
正しく使用できない、ということを責めるのではなく多少は許容し取り戻す方法を提案するのもありだと思い、
そのような指導をしていることがよくあります。