(本日の記事は、食事中の一般の人は読まないようおすすめします。)
ここ数年で一気に新しい薬が出て来た分野といえば抗がん剤や肝炎の治療薬が目立ちますが、地味に進化しているのが「便秘薬」。
便通を整えられないことは人の尊厳を大きく損ねます。
生まれてから死ぬまで便は出ます。人はうんこから逃れられません。
見たくないけど見ないといけない。匂いも形も色も健康のバロメーター。
偉大なるうんこです。
生まれてから死ぬまで飲む可能性が高い薬です。
あまりにもありふれた症状だけれども、なかなか治らない人も多い便秘。30年以上あまり新薬がが発売されない状況が続いていたのですが、ここ数年新薬がバタバタと発売されております。(ラキソベロンの1980年発売以降、新薬が出ていない状況でした)
1.アミティーザカプセル(ルビプロストン)
クロライドチャネルアクチベーター(日本語で書くと塩化物イオンチャネル活性化剤)
消化管内への水分の排泄を促進する。
作用点:小腸(小腸内の塩化物イオンの通り道を活発にすることで、小腸内に塩化物を多く含んだ水分を出す。ついでに腸管内のナトリウムイオンと水も出ていく)
同時に腸液を多く分泌させるので、腸管を保護する効果もある(下痢や便秘では腸管が痛む)
プロスタグランジン製剤のため妊婦には禁忌(早流産の恐れ)
体内の電解質のバランスをいじらない。(酸化マグネシウムでは高マグネシウム血症が起こるなど高齢者では使いにくい)
欠点はカプセルしかないことで粉砕ができないこと
価格の高さ。
(2019/10月現在12μg 61.0円 24μg122円
比較するために他のよく使われる便秘の薬の薬価
プルゼニド1錠5.7円 ラキソベロン1錠7.8円 マグミット330mg1錠5.7円 )
空腹時に飲むと吐き気をもよおしやすくなるので食後に飲むこと。
2.リンゼス錠(リナクロチド)
薬価:88.3円
こちらも腸管内への水分分泌を増やす効果のある薬。
(アミティーザとは作用点が違う:こちらはグアニル酸シクラーゼC受容体に対する阻害作用)
欠点:食前服用であることと、一包化/粉砕が不可能なことで、介助を必要とする人への処方が難しい。
3.グーフィス錠(エロビキシバット)
薬価:105.8円
こちらは胆汁酸トランスポーター阻害剤で、回腸末端部の上皮細胞に発現している胆汁酸トランスポーター(IBAT)を阻害し、胆汁酸の再吸収を抑制することで、大腸管腔内に流入する胆汁酸の量を増加させる。この胆汁酸が大腸に水分を呼び、腸の動きも活発化させる。
胆汁酸製剤やウルソデオキシコール酸との相互作用があり、作用が減弱する(当たり前)
こちらは一包化及び粉砕できます。
4.スインプロイク錠(ナルデメジントシル酸塩)
薬価:277.1円
オピオイド服用中に起こる便秘に関しての薬。
消化管内にあるオピオイド受容体に作用して、オピオイドを飲んでいる際の便秘症状を抑えます。(オピオイドの鎮痛作用は中枢で、スインブロイクは中枢に働かないように化合物を装飾しています。(分子量を大きくして血液-脳関門を通りにくくしている)
他の原因の便秘に使用しても効果がないどころかオピオイド離脱症状としての胃痙攣や重度の悪心が起こる恐れがあります。
5.モビコール配合内用剤(ポリエチレングリコール:マクロゴール4000、塩化ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、塩化カリウム)
薬価:1包85.0円
こちらは。腸に疾患のない方で便秘がずっと続いている人向けの薬です。まずは、腸に疾患がないかどうかを調べましょう。
便のかさを増し、柔らかくするので、腸管の内圧が上がります。腸閉塞、腸管穿孔、重症の炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎、クローン病、中毒性巨大結腸症等)があるもしくは疑われる人が飲むと腸が破けて最悪亡くなる場合があるので、ほんとうに腸の疾患がないかどうかを確認してからにしましょう。
1包(6.8523g)中に、下記の成分を含有する。
マクロゴール4000 6.5625g
塩化ナトリウム 0.1754g
炭酸水素ナトリウム 0.0893g
塩化カリウム 0.0251g
こちらの薬、一緒に飲む水も「薬」です。水とポリエチレングリコールが結合して、便の核になります。1包あたり60mlの水の量をだいたい維持しましょう。水以外のものに混ぜてもいいです。(りんごジュースをおすすめしていました。スポーツドリンクもモビコールの電解質組成を大きく変えないので支障ないですが、スポーツドリンクを電解質の補給で飲む場合の効果はなくなります。(吸収されずに便として出ていってしまう)
主成分のマクロゴール4000の安全性はマウスやラット、モルモットでも実証されています。(体重1kgあたり50g以上飲んでも半数は死なない)
成人の標準量は2包 塩化ナトリウム0.3508g 6包になると1.0524gとなりますが、これらは吸収されません。)塩化ナトリウムの濃度はOS-1とほぼ同じです。当然のことながら、この配合なので味は辛い。さらに言えば、水に溶かして飲むとはいえ、溶かすの必要な水の量も多い。飲みきれない場合も想定される。成人の場合は最低120ml(4包一度に飲むときは240ml)飲みきれない場合はその日のうちに一日の服用量を飲みきればよいです(便のかさを増すためにもなるべく一回服用量を入り一度に飲むほうが望ましいです。特に、直接口をつけたあとのものを残すのは菌の繁殖が激しくなり、ただ開封しただけのものの2.5倍になります。
長所は、小児適応があること
一緒に飲んでいはいけない薬がないこと
欠点は、水を多く飲まないといけないこと
薬価が高いこと。
参考文献:各医薬品の添付文書、インタビューフォーム、製品情報
OS-1の製品情報
一般社団法人 日本医薬品添加剤協会の医薬品添加資料
一般社団法人 全国清涼飲料連合会の「開栓後は、お早めに。」
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