「くすりや」の「現場」

薬屋が見た、聞いた、考えた、さまざまなことを書いていくブログ。「ブログに書いてある情報は一般的なものです。ご自身に合ったものにするにも、受診している医療機関のスタッフ、かかりつけの薬局の薬剤師に相談しましょう。」正論でぶっ叩かない医療者に!

ネイル 対 プラモデル 小児の誤飲対策

 親の趣味道楽の中で、お子さんが誤飲すると危険なものを扱っているのが「ネイル

」と「プラモデル」です。

 1.扱っている危険なもの

 ネイル

 ネイルカラー、除光液(大人用は油性の溶剤・トルエン、アセトンなど、小児用は水性の溶剤エタノールが中毒の原因となる事が多い)

 爪切り 刃物です

 切った爪やつけ爪

 

 プラモデル

 塗料、薄め液(ネイルカラーと同じく)

 接着剤(塗料よりは危険性は低いが飲み込んだ量によっては危険)

 カッターやニッパー 刃物です

 切ったプラモデルのパーツ(完成品を加える事例もあります)

 

 2.特に危険!有機溶剤

 有機溶剤を飲んだ場合は吐かせない

鉄板です。吐いた時に肺に流れて肺を傷めることがあるからです。

 マニキュア液体重1kgあたり0.5ml以上、除光液0.2ml以上飲んだ時は受診とありますが、量がわからない場合は即受診。

 溶剤を吸って気分が悪くなった場合 

 多量の場合は飲んだときと同じ状況になるので、症状があれば有機溶剤のない空気のきれいなところで様子を見る。

どんな症状が出る?

 →のどの痛み、吐き気、嘔吐、頭痛、ふらつき など

  皮膚についた場合は皮膚の炎症

 

 皮膚についた場合

 水と石鹸で2回以上洗う

 目に入った場合

 流水で15分以上洗う

 

いずれも、応急処置をして症状があれば受診する事例です。有機溶剤を扱う場合、物質によっては業務で扱う人でも業務量の制限や健康診断を必要としますので、換気をしっかりと。

一般の方の連絡先

 大阪中毒110番(365日 24時間対応)
     072-727-2499 (情報提供料:無料)
 
 つくば中毒110番(365日 9時~21時対応)
     029-852-9999 (情報提供料:無料)
 

 

 

 

 参考資料(一般の方向けです)

02_化学製品 公益財団法人 日本中毒情報センター

(社)沖縄県薬剤師会−こどもの誤飲誤食110番−文具類

 

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「じゃあわしらぁーお薬手帳に何書きゃええんじゃろー」

 「お薬手帳を持ってきたら多くの薬局では安くなる」

(ただし、半年以上間隔をおいて受診した場合や、ある条件に当てはまったところは変わらない)

 

 という方針は4月以降も継続です。

しかし、なんぼ言ってもお薬手帳を持ってこない人がいる。

どういう人達かといえば

「物を持ち歩くという行為が面倒な人」

であることが多い。しかし、そんな人達でも、保険証は持ってくる。

持ってこなかった場合のお金の負担が半端なく、病院によっては返金できない(もしくは返金手続きがとんでもなく手間がかかる)からである。ま、当日その場に保健証を持ってこなかった時点で自費確定で、レセプト請求に間に合えば医療機関側の好意で返金しているだけにすぎませんのでご了承お願いします。加入している健康保険にご相談を。

 

 「毎回同じじゃけえ薬が変わったときだけでええわ」

と言われることがあります。

いや、処方・調剤した日付が違うんです!

 これ非常に重要。

もし、あなたが交通事故にあって搬送されたとします。あなたの知らない間にお薬手帳の中身を確認し、服用している薬が何か調べます。そこに処方された日付が正確に書かれている手帳があれば、飲み忘れているかどうかは別にして、あなたが飲んでいる薬の内容がかなり正確に把握できます。

 

 そして、薬剤師の皆さん。

お薬手帳にもっと書き込みませんか?

例えば、残薬調整したので減らしたことや(今回は処方されていないが、頓服として飲んでいる薬がある場合など)

他の医療機関の薬と併用確認したこと

一包化したこと

粉砕したこと

処方変更とその理由

手帳を見れば他の医療機関で行っている薬物治療がわかるようにすると、手帳を持っていったほうがなにかいいことがあると思われるでしょう。

 勿論、最初のページの既往歴・アレルギー・副作用歴については書いていますよね?

 

 ここからは一般の方にも向けて。

 皆さん御存知の通り、日本は災害が多いです。停電になった時でも使える紙のお薬手帳を常に持ち歩きましょう。紙なら、どんな人でも簡単に扱えますし、情報漏えいリスクも低いです。

 そして、自分の体調や前回受診までの経過、手持ちの薬の数(頓服や外用について)についてお薬手帳に書いてはどうでしょう。

 そうすれば、患者と医療者の間の交換日記になります。

こういった継続した記録が、引っ越ししても、病院や薬局が変わっても役に立ちます。(引っ越さない場合は薬局を変えないでほしいのが本音)

 

 

 

 

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「インフルエンザ軽症なら受診は控えて」対「診断書がないと休めない」

 今回は、こちらの記事を見ての感想を述べます。

 

www.fsight.jp

 

headlines.yahoo.co.jp

 

 記事タイトルが煽ってますね(著者の本文も煽っている印象があります)

実際のところは、

「ごめんやけど、熱出てすぐ受診してもインフルエンザとハッキリ診断できない場合があるやで〰できたら1日待って来てや〰」

という程度です。

 インフルエンザの迅速診断キットの機能に限界があって

 発熱後24-48時間後がバランス良く判定できるんですわ。

www.ncbi.nlm.nih.gov

によると、

発熱後24-48時間後では

感度92%、特異度96%と

非常に確率が高いです。

 

感度:疾患である場合、検査陽性である確率

特異度:その疾患でない場合、検査陰性である確率

 

では、土日が関係して検査できない場合はどうすればいいか?

 

同論文によると、

発熱後12-24時間と、発熱後48時間以降の感度・特異度はこちら。

 

発熱後12-24時間

感度:66% 特異度:97%

発症後48時間以降

感度:59% 特異度:100%

 

大きく変わりませんが、抗インフルエンザ薬で治療できるかどうかの差はあります。

もし、土日祝日で休日診療のあてがない場合でも半日は待つと検査の精度が高くなります。ただし、本格的にぐったりしている場合や既往症の問題があったり、水分も摂れない尿も出ない、物が食べられないなどの症状があれば受診する方がいいでしょう。

 

 特にお子さんが小さい場合は待てないでしょうねえ。

 

 じゃあ、どうすればいいか?

 発熱した場合は、次の日は休みと会社や学校には伝えましょう。

次の日に検査しないと正確にはわからないのですから。

 人手を手配する側から見れば、早く連絡してくれる方が助かります。

連絡する時には、次の比必ず受診すると伝えると、対策を取るというのが伝わって会社や学校も安心すると思います。

 

「インフルエンザかどうか判定するには1日かかる」

これを定着させたい。

 

★診断書がないと休めないという問題について

 ズル休みを危惧しているのでしょう。

この場合も、明日受診するから明日休ませて、それ以降は受診してから伝えるという対処でいくといいでしょう。

 学校は出席日数を評価するのを止める

 会社は全員がフルパワーで動いて当たり前、それで仕事の見積もりと立てるのを止める

ことが必要なのではないでしょうか。

 ズル休みが許せない。

気持ちはわかります。ややこしそうな仕事の時に限って休む人もいますね。

 もう少し上手に休めばいいんですけど、

 

 なぜかズル休みした日の様子を職場で話したり、

 

 さらにはSNSに画像や映像付きで上げてしまったりする人

 (文字だけの場合は内容によっては家で寝ていたという説明がつきますが)

 

 がいるんですね。詰めが甘いとしか言いようがない。

 ただし、精神的に一杯一杯になった場合は別です。それはズル休みといえど自分の心身が悲鳴を挙げているのですから。

 休んだ時に起こったことを取り返すのは自分です(上司がかぶってくれることもありますが)それを職場の同僚や同級生や先生がやいやい言うことではないです。

 

★症状がキツイ、早く治したいという意見について

 症状がキツイ、早く治してあげたいという気持ちもわかります。

 医療従事者の想像する「症状がキツイ」は更に上を行きます。一刻を争う症状の人を日々見ています。

比較対象が相当激しいので、軽症といってしまう部分もあります。

 なお、インフルエンザの重症はホンマに一分一秒を争う症状です。この重症になるかどうかは、非常に申し訳ないのですが、運としかいいようがないのです。これも医療の限界です。

 ワクチンを予防接種すれば重症化の確率が下がるというのはいろいろデータが出ています。それでもゼロにはなりません。

 

 これも、医療側の認識と患者側の認識の違いでしょうか。こちらを少しでも縮めるところから始めたいです。

 

★医療側の人員が足りない

こんな趣旨のコメントもありました。

 「医療側の人員が足りない?そんなの患者には関係ない」

 

いや、あるんですよ。オオアリですよ。

 繁忙期に円滑に回せるだけの人員を置け

 →閑散期は暇

 →その期間は休んだら?

 →その間どうやって医療従事者は食べて行けと・・・

 繁忙期に一年間暮らせるだけの給与が出ればいいですが・・・

 →社会保障費の増大(自費で支払う人がいれば話は別)

 →しかし、税金や保険料は上げてほしくない

 医療従事者は安い給与でやればいいじゃない

 →必要な仕事だけれども、食べていけない給与だったら働けないといって他の職に就く

ざっくりいえばこんな感じです。

 

 

 ほんま、医療側と患者側の水が埋まってほしいです・・・

 

 

やはり、インフルエンザ対策として求められるのは

みんなインフルエンザ予防接種を受けよう

ですね・・・・

 

 

 

 

 

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だから対物業務は大切だって言ってんだろう

 先日参加した研修会にて。

「病院薬剤師は調剤室から出て病棟での活動でエビデンスを出して報酬を勝ち取った」

「今度は 薬局薬剤師が調剤室から出て地域に貢献を」

と講師の方が話をした。

 

 病院薬剤師は調剤が外に出て、自分たちの仕事ではなくなったので病棟に出た。

今まで病院薬剤師がやっていた調剤という作業を薬局薬剤師がやっている。

薬局薬剤師が外に出るには、調剤という作業を誰がやればいいのだろうか?

1.薬局を集約させて、中で作る人と外に出る人に分ける。

2.診療所は院内処方にして、薬局の薬剤師が外に出る。

 

頭のいい人の考えることは違う。

 

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「薬剤師の働き方改革」について(2)「心身ともに休んで、メリハリのあるシステムを作ることは国民利益につながる」

 薬剤師としての業務を、長期間継続していく方法としての「働き方改革」。

 そのために、業務に参画する人を増やす

       高いレベルの業務ノウハウを共有する

       必ず休む仕組みを作る

       薬剤師業務内で役割りを分ける

 

 ことの必要性を記しています。

 

 ★必ず休む仕組みを作る

 ただし、高みに登れそうな人数も限られます。本人の能力だけではありません、いろいろな制約で仕事にリソースが割けない人も多いからです。

 自分の事情

 家族の事情

 さまざまです。

 むしろ、仕事に全リソースをつぎ込める人のほうが少ないです。

 同じ医療職でも看護師は患者さんの支持を得ていますが、同時に働き方改革も行っています。過酷な労働だから支持を得られるというのは違うと思います。薬剤師も同様に女性が多い仕事です。(医療に携わる薬剤師の数で言えば3分の2)出産や育児、介護で一時十分な時間働くことが出来ない状況になる人が多いのです。

 在宅のクリニックや土日に開けている医療機関も医師は複数体制です。土日は代診の医師だったり、そこに携わる医師が順番で回したりしています。

 (もしかしたら、薬剤師が土日や夜など参加しない人が多いと思っているのでしょうが、これはシステムの組みようで対処できるのではないでしょうか)

 

 働く時間の制限は女性に限りません。親の介護や自分や家族の病気で働き方に制限が出てくる人も増えてきます。

 もし、

 医療・介護職に就いたら優先して家族を介護施設に入れることが出来るとか、

 保育園に優先して入れるとか制度があればいいのかもしれませんが、

そういった状況ではありません。

 

 最近は、所属するコミュニティがひとつではない人が増えた(多い)ため、どっぷりその業務に携われる人が減った結果、立ち行かなくなるものも増えてきています。仕事ではないけれど、PTAとか町内会の活動が立ち行かなくなっているのは、企業活動でバンバンやりたい人と地域活動をバンバンやりたい人が直接やり合わず(お互い別の世界にいるので直接対面しない)、どちらでもない人が振り回されているように思えます。

 (これは会社での仕事に限らず、地域活動、子育て、家事、いろいろな分野で「極めるのが大好きな人」によって起こされた無理のある質の向上の結果と認識しています。)「子育てや家事でこだわるのが大好きな人」が一番多くの人を心身ともに痛めつけているように思います(;・∀・)

 

 実は、週5日40時間働くのが体力的に無理な人も意外と多いです。定期的に通院を必要とする大きな疾患もないけれど、気候によって体調を崩したり、今詰めて作業すると倒れたりする人がいます。

 そういう人でも、週3日20時間だったら働ければルーティンの支援的活動には参加できます。それだけでも、薬局の外で活躍する人の助太刀になります。普段接している患者さんには優しくなれても、同じ状況の一緒に働く人には優しくなれないなんて本当にヒューマニュズムを持ち合わせているといえるのでしょうか?

 

 

 「止まると死ぬ」系の人は、まとまった休みを取ってそこでも活動的にしたがるのでしょう。しかし、「週5日40時間働くのも無理な体力の人」はまとまった休みよりも、こまめな休息を求めています。まとまった休みがあってもその半分ぐらいは疲れを取るために寝て過ごします。(実際、そのような友人がいますが、週2日の休みは連続でないと働けませんし、その2日の休みの1日目は必ず寝ていて、ひどい時には疲れが取れるのが2日目の夕方ということもあります)

 それと、年をとったら体力が落ちていきます。

 

★お互いのライフスタイルを尊重しよう

 

 制約のある人でも参入できるようにして、体調が悪くなっても引き継ぎやすい作業を行ってもらえば、お互い住み分けが出来ると思います。

 

 自分の働き方を他人に求めず、お互いの生き方を尊重するのがいいのではないでしょうか。 

 

 それでは働きたい人から「もっと働きたい」「不満」の声が出るかもしれません。

働きたい人は働けばいいんです。ただし、それを他人に求めないこと。理由があって働けないことを理解しましょう。あなたも、理由があって働いているのでしょうから。それが出来ない人が多いなら、一つの場での働く時間を制限して、副業を許すほうが余暇時間の選択肢として「働く」ことになるのだからお互い様なのではないでしょうか?

 

 ただ、ワーカホリックの人は注意してください。体が強い分、自分の体調の変化に鈍感です。知らぬ間に疲れが溜まって体を蝕みます。気づいた時に命を失ったり、後遺症で仕事に戻れない体になることもあります。そうならないためにも意識して休む習慣が必要です。体が弱い人はそれほど重症になる前に体のほうが警告を出します。ゆえに、体の弱い人は案外長生きです。意識して何もしない時間を作りましょう。 

 

そう考えたら、副業をしたり、自分の住んでいる地域の活動をしたりで薬剤師としての時間以外を持つことはメリットが大きいですね。勿論、自己研鑽をしても構いません。

 ある人は家庭、

 ある人は趣味、

 ある人は副業と、

 パワーを分散できます。さらにいえば、いずれ薬剤師を辞めるときに、自分には何も残っていなかったなんてことにはなりません。

 

 「太く短く」働く人よりも、「細く長く」働く人のほうが多くの人に影響を与えられます。たとえ、週40時間働けない人でも、40年大きな病気をしないで働くことができれば、その地域の患者さんの経過をよく知ることが出来ますし、後進に指導できます。表立って指導していなくても、接しているだけで指導になります。

  

 

 

 

休むこと、つまり仕事以外の時間を持つことはプラスです。

 患者さんの生活を鑑みて薬物治療に携わるとなったら、生活者の視点は必要です。自らが生活者としての時間を過ごし、感覚をつかむことも必須です。患者さんは生活の中で治療をしています。治療を生活になじませるには、絵空事のような治療では実現できません。スーパーで売っている野菜の値段を知らないで、栄養指導するのは重みが違います。

 また、体を休ませ、体力気力を充実させることで継続して業務に携わることが出来ます。

 休みはただ休むだけでなく、趣味に勤しんだり、勉強に励んだり、家事をしたり、それぞれが自由に自分なりの時間を過ごします。それが、患者対応の引き出しが増えることにつながるかもしれません。

 

 裾野が広がることで、多くの一般の国民にとって「がんばってるね」という評価をいただければ、一部の声の大きい人が「薬剤師は頑張っていない」と言っても返せると思います。(こういう人は、どんどん満足のハードルを上げていく人でもあると思います)

 

 誰がどうみても過酷な労働をしていても、納得しないタイプの人もいます。そういう人はどんなに頑張っても人の頑張りは認めません。他人を認める気がないのです。認めないでどんどん頑張らせる事が目的の人もいます。

 それに、過去に比べて一般の人の薬剤師バッシングは少なくなっているように思います。飲み方の工夫を教えてくれた、疑義照会で間違いを止めた、など地道な活動は国民に伝わっているようです。 

 

 家族や自分の状況に合わせて働ける人も活用したほうが裾野が広がって、バリバリ働きたい人がルーティンワークに縛られることが少なくなります。お互いの持ち場で頑張ればいいのです。

 多くの人が自分ができる範囲で仕事をし、支え合うことができれば、お互い効率的に思うのですが、どうでしょう? 

 

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「薬剤師の働き方改革」について(1)「裾野を広げよう」

 今回の記事は、自分が寄せたコメントを拡張する内容です。

 

熊谷信の「薬剤師的にどうでしょう」
薬剤師の働き方改革、どう考える?

http://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/di/column/kumagai/201801/554379.html

 

以下のコメントをしました。

” どの業界でもいえるのですが、制度全般を作る人がワーカホリックの人ばかりで、彼らの価値観で物事が決まっているように思います。実際の世界では、むしろワーカホリックの人は少数で、働くのが嫌いな人や働こうにも制約のある人やる気はないけど与えられたことを淡々とこなす人が多数で、彼らが粛々とこなすことで世の中は回っています。

 継続して運用できる制度にするには、やる気はないけど淡々とこなす人が粛々と運用できる制度にしたほうが確実と私は思います。ワーカホリックの人が目先のことだけを考えて労働の質を高めすぎた結果、誰も後継者に名乗りを上げず事業が継続できなくなることは日本のものづくりの現場では散見されます。業務の継承は、競争相手を作り自分の付加価値を下げてしまう恐れもあります。

 しかし、医療業界は人と人との関係に重きを置くので、同じ業務を行う人が増えたほうが助けられる患者さんの数は増えます。業務の継承やマニュアル化は、むしろ自身の業務を言語化して他者に伝える能力があると判断され、価値は上がるのではないかと思います。

 ワーカホリックの人は得てして自分の体力を過信しがちです。働いている時に夢中になって自分の疲れや体調の変化に気づかないのかもしれません。いざ体調不良に気がついた時は取り返しのつかない状況だった、ということになったら、自分の考え方や行ってきたことを他の人が引き継ぐのは容易ではありません。

 働きたい、人のためになりたい、という気持ちは強いのは認めますが、体を壊してしまっては多くの患者さんを助けられなくなってしまいます。家族も路頭に迷って、支援を必要とする人を増やしてしまう恐れもあります。細く長く働き、仲間を増やすことで日本全体でより多くの国民の健康に寄与できるのではないでしょうか。

 

助けられる患者さんが増えたほうが薬剤師の役割が果たせ、国民に与える印象が良くなると思うですがどうでしょう?

 少数のカリスマ薬剤師がいるけどその人にアクセス出来る人数が限られる状況と、輪番でそこそこ回っている状況では、どちらがより多くの国民に薬剤師という職業が届くでしょう?

 ”

(ここまで)

 働き方改革は薬剤師のためだけのものじゃありません。

 継続して事業を運営できるようにするためのもので、最大の恩恵をうけるのは国民です。 

ゆとりある働き方=さぼっていると考える人は落ち着いて物を考えてはどうでしょうか。 ゆとりある働き方=無理なく長期に渡って多くの人が業務に携われるので、多くの人が恩恵を受けられるのです。

 

 働き方改革はシステムの問題です。どんな家庭環境、体質、性格の人であっても運営できるようにするのです。そして、仕組みを作るのには時間がかかります。運用し始めてからの問題点もあり、改善するのに時間がかかります。仕組みを作るのは、本格的に人口が減り始めてからでは遅いのです。本格的に人口が減り始めた時点で運用が安定していなければなりません。

 もっと仕事をしっかりやるべきという意見もあります。長時間労働をし、私利私欲を排し、仕事に集中せよ・・・という精神論では全国各地で運用できるでしょうか?

 

 全国の広い範囲で、長い期間サービスが提供されることが最も多くの人にいい影響をあたえることが出来ます。

 

 「なるべく良質なサービスを広い範囲で、多くの国民が受けられる」ためにはどういう仕組みを作ればいいでしょうか?

 

 対人サービスが多いので、

 サービスに携わる人が長期間働けるようにすること 

 → サービス提供者側の心身の健康が維持できること

 → 休みながら交代しつつ働ける体制を作る、それぞれが役割りを果たせるようにする(得意なジャンルの仕事に特化させたほうがいい人と、それらをサポートする人/外の地域活動、在宅、薬局内での作業。多岐にわたります)

 → 多くの人が無理なく参加できる

仕組みが必要ではないでしょうか。

 

 今回の記事は、ノウハウの共有について書きます。

 

 120%の能力の人1人の人が24時間365日対応するのと、近隣にいる70%の力を持つ4-5人で休みを取りながら順番で輪番対応するのでは、これから10年間にどちらが対応できる人数が多いでしょう? 

 

  裾野を広げるほうがいいですよね。

 

 テレビの医療番組でも、スーパーマン医師の特集をよくされます。自分の体の治療なので、最高のものを施されたいのでしょう。実際は、スーパーマンでなくても治療できる疾患であっても、です。同じことを考える人はたくさんいます。自分が一番大切ですものね。自分さえ助かればあとは喉元をすぎれば忘れてしまう人も多そうです。そうなると、スーパーマンの取り合いです。しかし、一人の人に重い負担をかけるのはいい影響を与えませんし、散発するスーパーマンを期待するより、そこそこの能力の人が多く生み出したほうが良い医療を受けられる確率が上がります。

 

 その職業の人に求められる業務レベルが高くなる

 →その職業に就く人が少なくなる

 →人手不足になる

 →質の高い仕事をしていた人の仕事量が増える、もしくは他の業務に費やされる時間が増えて立ち行か泣かなくなる

 →燃え尽きて辞めていく、最悪の場合体を壊してしまう。

 →しかも、スーパーマンの技術は引き継がれないので良いサービスは途絶えてしまう。

 

 よりよいサービスと言っても、需要と供給のバランスが大事です。いくら良いサービスを求めても、供給する人が遠くに住んでいたのでは実現できません。

 それなら、近くに住んでいるそこそこのサービスを選ぶほうが実現できる可能性は高くなります。

 

 参入する障壁を無駄に高くすることなく、多くの人がサービスの提供を受けられるようにすれば結果として多くの人が恩恵を受けられると思います。

 

 では、裾野を広げるにはどうすればいいでしょう?

 

 ていうか、なぜ、「意識の高い人」は裾野を広げようという発想にならないのでしょう?

  自分が苦労して得た技能を安々と人にあげたくないからでしょうか? 自分に自信があるなら、自分はさらに高みに登るべく、自分にとっては簡単な仕事で誰かにさばいて欲しい仕事を分けようと考えませんか? もしかして、自分がとても崇高な存在だと思っていませんか?参入障壁を挙げることで、安定したいのでしょうか?それとも選民意識を満たしたいのでしょうか?(毒)

 「高い技術を持つ町工場が後継者がいないので事業をたたむ」という話題があります。もし、本当にその技術が必要ならば、世界中から技術提供の話が来ていたはずです。それを断っていたのでしょうか?断っているうちに世界はこの技術を必要とせずにいいものが作れるようになったのかもしれません。

 次世代に苦しい思いをさせたくない、と言っていますが、自分の技術を簡単に身につける方法をマニュアル化させなかったのでしょうか?疑問に思います。

 

 自分のノウハウを簡略化して、7割ぐらいこなせる人を量産すればいいのです。

 

 全部ではないノウハウを分け与えて、その道の第一人者になるという道もあるのです。自分の持てる技術を7割ぐらい教えて、実践できる人が10人いれば、その10人がさらに10人、100人に教えて・・・輪が広がります。弟子がさらにアレンジを加えて、あなたの技術が進化します。あなたは弟子のやり方を取り込んで技術を磨くことも出来ますし、教えることは弟子がやるので自分のやり方を極めることも出来ます。

 

  業務の効率化、マニュアル化、情報共有・・・ これだけの仕組みを作れる人になれば、現場での技術を後進に譲っても、重宝がられるでしょう。技術を長いこと独占した結果、根っこから技術事いらないなんてことになりかねませんが、システムを作れる人ならその思考能力を買われるでしょう。長時間の過酷な労働をする必要がなくなったからと言って、パワーのある人のアイデンティティが奪われるようなことはありません。

  さらにノウハウをマニュアル化し、それらの大元となって、よい影響を遠くにまで波及させられるようになれば、その人の価値は高くなります。ノウハウを伝えることはマイナスにはなりません。 そして、自分が始祖となって行われたことが、それぞれの場所で花を咲かせます。影響が長期に渡って及ぶのです。

 

「自分の知識は分かる人にしか教えてやらん」というケチなことは言わないでください。患者さんはたくさんいます。そして、人間の寿命は長いです。そのような態度を取る人の技術を使わずに良い医療を提供する方法を生み出されて、追い出されて終わりです。

 孤高のヒーローで終わるつもりですか?

 「周りが理解してくれなかった」と言って一生を終えるのですか?

 

 こういう「パワーのある人」は世の中の大部分を占める「やる気はないけど淡々とこなす人」が運用できる方向にそのパワーを向けてほしいです。

 そうすれば、もっと高みに登れますよ。

 

 「仕事が好きで好きでたまらない人」は、それそれの世界で「自分が思い描く、高いレベルの仕事」を求めて精力的に動きます。その結果、実現できそうにない絵に描いた餅のようなものができあがり、現場で運用する人が苦悩したり揉めたりします。

 そういった人ばかりが制度設計の場や運営側にいるから、やたらと気合で乗り切る仕組みになったり、現場が混乱することになるということに気づかないようです。

 しかし、他の人でもある程度まで運用できるようにすれば、自分の理想である、高いレベルの仕事をする仲間が増えるはずです。今までやってきたことの多くは他の人に分け与えればより質の高い仕事に集中できます。付加価値が高まりませんか? 

 

 

  

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やはり対物業務も大事だ

 「薬剤師の業務は対物業務から対人業務へ」と界隈では言われています。

 

 しかし!

 

 やはり、対物業務も大事だと思います。

 

 薬の量を間違えない

 お渡しする薬の包装が破損していない

 

など、患者があらゆる意味で安全に、衛生的に薬を飲めるようにする対策の中に対物業務が含まれると考えます。

 こちらは対人業務と対物業務が混ざっているもの

 患者にとって妥当な処方内容か

 患者さんの生活や疾患、体格などを知らないと判断できないので、対物業務とは言い難いです。既に、対人業務を行っていますね。そもそも、処方箋というものは患者さんの名前が記載されていて、一歩間違えたら毒になってしまう薬を、個別化することで安全に飲めるように工夫したものです。

 

 患者さんの手に渡るまで、薬の品質を低下させないように保管すること

 手に渡った後も、飲みきるまで品質が低下しないような対策をとること、取れるようにアドバイスすること

これも、「薬を渡してからが勝負」の範疇に入ると考えます。

 

 対人業務が大切だから対物業務はおろそかでいい

 でもなく、

 

 薬を安全に渡すことが第一なので、対人業務にまで手が回らない

 

でもない。

 

バランスが大切です。

 

患者さんが飲みきるまで薬の品質を低下させない

飲みきるまで所々の問題に対応して、次の治療確認ポイント(=次回診察)までつなげる

ための対人業務であり、対物業務と考えます。

 

 薬剤師が対物業務を手放してはならないし責任を取るのは当たり前のことだが、人によって異なってくる服用中の配慮や使用方法の提案といった対物業務に重きを置こうという意味と解釈します。

 

 

 

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