今回は薬局新聞新春特大号の薬剤師フィールドリサーチの記事を掲載します。
昨年、コロナ禍の影でひっそり発生し、今も続いている「医薬品の不安定供給問題」。その中で薬剤師第一条の精神をもって「医薬品供給データベース」を開発したNOCHIKAさんに取材をしました。現状の運用形態はどのようになっていますか。
「発足当時は全24名のボランティアで対応していましたが、現在は自分を含めて4名で運営しております。活動はボランティアで非営利として継続していますが、現在は作業量も増え続けており、毎日非常に多くの時間と労力を必要としているため、今後も非営利で継続していくかどうかについては未定としています。
作業内容としては、データベースへの登録、ホームページのシステムについては私が担当し、日々構築と改修を繰り返しています。
運営の3名については、出荷調整等の表記揺れの定義、日々の情報収集とデータ入力をお願いしています。」
.データベースを立ち上げたきっかけは?
「SNSでの反応としては以下のツイートが詳しいです。
https://twitter.com/penguin_pharm/status/1435942268729364482
きっかけは単純に「何故誰もやらないんだろう」という疑問でした。各々が各々の立場で相手に責任を求める姿は、あらゆる場所で目にしてきましたが、責任追及によって物事が解決するのは見たことがありません。
元々「誰もやらないなら自分がやる」という性格なので、未経験分野ではありましたがすぐに解決方法を調べてデータベースの構築を思いつきました。」
3.反響はどうでしたか?
「予想していたよりも遥かに好評で未だに驚きを隠せません。現場の薬剤師のみならず、卸企業のMSさん、製薬企業のMRさん達からも利用しているお話をいただいております。
また、病院のDI担当の方からもお礼のメールをいただいています。その他にも、予想外のところでは公的機関や企業団体様などからもお声掛けいただいています。」
データベース作成で苦労した点、苦労している点はなんでしたか?
「データベースを作る、ということでまずは医薬品のマスタが必要となります。インターネットを探すといろいろな機関からマスタは無償提供されていますが、実際に必要な情報にはどれもいま一つ足りないというところです。
必要な内容は医薬品だけではなく、YJコードや薬価コード、その他にGS1コードなども必要となり、製薬企業名も重要です。
それらの複数のマスタを統合して、独自のマスタを作るところに非常に時間がかかりました。
しかし現在も継続している一番の問題点は、「出荷調整」・「出荷停止」・「販売中止」・「それらの解除」の通知において、表記揺れが著しいことです。様々な表現方法で
通知されており、出荷調整だけでも「販売を継続できない」・「出荷を見合わせる」・「計画出荷とする」・「出荷を制限する」・「出荷量を調節する」などの多岐にわたっています。 これらを文章の流れから判別し、会議で話し合いながら医薬品を分類していきます。これは自動化できない作業であるため、現在でも非常に時間と労力が割かれています。
その他にも製薬会社と製造業者、製造販売業者、販売業者が異なる場合は特に対応が難しくなります。
例えば、ニカルジピン塩酸塩注10mg「タイヨー」などは、通知の発出先は日医工、販売会社は武田薬品工業株式会社、製造販売元は武田テバファーマ、屋号は「タイヨー」と把握が難しくなっています。
また企業側の通知については、PDFファイルなどで通知していても、新たに内容が増えた場合に当該リンクを削除していたり、上書きしてファイルをアップロードしているために、過去の通知が見られないというような対応も確認しています。最も医療機関に対して影響があると思われるのは、出荷調整等の通知を出した後に、その解除の通知を発表しない場合があるということです。
これは現在評価している最中ではありますが、「在庫消尽後販売中止予定」や「○月頃解除予定」などの「予定」と記載されたものについて、実際にその時期になってから改めて通知されているのかどうかというところも疑わしいものが多いと感じられます。「予定」と発表しているので、実際にどうなったかは現場側から卸等に確認を取らなければ把握できないこともあると耳にしています。
また一部の製薬会社については、「卸と医療機関との間での出荷が滞っているのであって、製薬会社側として生産は問題なく継続しているため、出荷調整とは通知しない」と断言している製薬企業も見受けられます。
お知らせ一覧に表記されておらず、医薬品の個別の説明ページにリンクが掲載されていたりと、非常に見つけにくいようになっている医薬品も確認しております。供給・流通状況については、企業側のホームページの閲覧しやすい場所に表示するなどのガイドライン等も必要であると感じます。」
NOCHIKAさんはこのデータベースを作成している間、昼間は薬剤師業務、夜はデータベース作成と、睡眠時間が殆どなくなってしまうことがあったそうです。現在に至るまで、身を粉にして働いている状況です。本来でしたら、製薬企業や行政が担当することではないかと思うのですが、医薬品の供給状況を伝えるのも薬剤師の務めと考えるNOCHIKAさんはじめ有志の皆さんの志の高さにただただ頭が下がる思いです。
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