「くすりや」の「現場」

薬屋が見た、聞いた、考えた、さまざまなことを書いていくブログ。「ブログに書いてある情報は一般的なものです。ご自身に合ったものにするにも、受診している医療機関のスタッフ、かかりつけの薬局の薬剤師に相談しましょう。」正論でぶっ叩かない医療者に!

 医薬品増産は手間がかかる

医薬品の増産にはそう簡単にはできません。

例えるならば、「衛生管理とレシピがガチガチに決まった家庭用の調理」です。

どれぐらいレシピが厳重かというと、食材の入手経路まで事前に届け出る必要があります。その基準を満たしていない場合、製造することはできません。

家庭用の調理なので、その食材専用の調理器具は用意されていません。他の薬を作ったのと同じ設備で薬を製造します。もちろん、同じ設備で前作った薬の中身が混入してはいけないのでしっかり器具を洗います。しっかり洗えているか確認した上で、新しい薬を作る必要がありますし、他の薬も過不足なく供給しないといけないので製造計画を急に変更することはできません。ある薬を多くつくるため、同じ機材を使って作る薬の生産は遅れます。オナにアパートに住む住民が共用の設備で調理を行うことを想像しましょう。ブッキングしないように事前に予約を入れて運用すると思います。同じように、工場全体の製造計画を立てています。

 もちろん、原材料が入手できなければ作れませんし、原材料を買うお金がなくても作れません。買う側が値段を下げて買えるようにするなんてことはないのです。

 

 

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薬剤師フィールドリサーチ(128)「コロナ治療薬有料化で起きたこと」

今回は2023/11/22発行の薬局新聞「薬剤師フィールドリサーチ」の記事を掲載します。

 

 2023年10月以降、抗SARS-CoV2薬が有料化されました。主に高齢者施設からあったこれらの薬の処方がほぼ止まりました。コロナ患者さん自体も減っている印象があります、お金がかかるようになったら後も処方されないのかと驚いております。

 

 発熱して受診する患者さんの主流は小児になりました。コロナよりもインフルエンザが多いように思います。対し、大人の発熱患者は減っているように思います。小児の場合は親御さんが心配するのと、保育園や幼稚園が診察を要請するのもあると思います。

 

 これは実際にコロナに感染した患者が減ったのか、お金がかかるし会社も以前ほど発熱しても病院に行くよう要請しないのか、熱が出ても受診しないようにしているのか判断し難い状況です。

 

 風邪症状に使う薬が不足している事態は改善の見通しが立っていません。その事に関する報道が最近なされたのも、風邪症状で受診する患者さんが減っている理由かもしれません。診察したところで薬はないし。

 

 

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リフィル処方箋には患者も責任が伴う

 医療費削減にはリフィル処方箋を活用する案が出されていますが、リフィルが適応される場面って思ったよりも少ないと考えていますし、患者が負うリスクや責任が増えるというのは大きく広報スべきと考えています。

 

 例えば

 毎日血圧を測って記録し

 受診も定期的に行い

 血圧の数値も安定していて

 生活習慣も規則正しく

 異変に気づく知識を持っている人

 であればリフィル移行は非常に簡単です。こういう人なら、自分の異変に気づいたら受診します。

 

 実際に投薬していると

 自宅で血圧を測定している人はあまり多くないのが現状です。

 

 医療現場で必要となるのは

 検査を自宅にいながら行える機器の普及

 自らの体調の異変に気づくようにするための教育

 重複投与や同じ診察を重複して行わないための医療データ共有

 栄養士やリハビリの活用による生活習慣改善

と考えます。

 

 患者が自分でリスク管理をし、自宅での治療に向き合うという責任を持ち、実践して成果を蓄積して医療従事者との信頼関係を築く必要があるというのは大きく宣伝する必要があるのではないでしょうか。

 

 きちんと検査したり異常に気づくのが難しい人に対して、薬局の薬剤師がモニタリングの手助けをする、という形でのリフィル処方箋活用と考えています。

 

 これをぶっちゃけた言葉でいうと

 暴飲暴食睡眠不足、不規則な生活をして、受診間隔もバラバラ、薬を飲んだり飲まなかったりする人にリフィル処方箋は発行されない

ということです。

 

 もちろん、患者データ共有及び受診間隔の確認のためにマイナンバーカードの使用は必須です、

 

 

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薬剤師フィールドリサーチ(127)「医薬品卸と門前薬局の価値」

 今回は2023/11/8発行の薬局新聞「薬剤師フィールドリサーチ」の記事を掲載します。

 

 よく言われる「門前薬局は医薬分業の理念に則っていない」などといった門前薬局悪者論ですが、医薬品供給が不安定になっている昨今では、医薬品の安定供給に役立っているようにも思えます。

 ご存知の通り、医薬品卸やメーカーは誰に薬が処方されたのか知ることはできません。(何人に処方されたのか、医薬分業であるならどの医師が処方したのかも知ることができないことがほとんどです。)いくつ発注があったというデータのみでメーカーは生産、卸は分配を行うことになります。
 門前薬局があると、ある特定の薬が集中して調剤されます。調剤したら必然的に医薬品卸に発注するので、発注頻度と発注量から「ここの薬局に多めに仕分ければデッドストックが起こらず多くの患者さんに効率的に薬を届けられる」と医薬品卸は判断できます。これが、門前薬局がないと、各薬局が小包装品をバラバラに発注し、中身を全部使い切ることなく保管することになります。各薬局で融通し合えば期限切れは防げる可能性が高くなりますが、使われずに有効期限を迎える薬は今より多くなるでしょう。また、医薬品卸による分配業務の手間が格段に煩雑になっていたでしょう。

 処方する薬の標準化を進めて、医薬品の種類を減らしていくことで医療費の効率化は可能でしょう。医師の処方の自由に触れる、製薬企業の利益という問題になりそうです。そうであっても、既存の薬と作用機序/代謝/効果に大きな差がないのに発売されている医薬品を整理すれば、医薬品供給不安定は少し解決に近づくと思います。その整理された医薬品に相応の薬科をつける。ただし、薬価差益はなるべく小さくすることも必要と考えます。

 医師とのコミュニケーションの密度だけでなく、医薬品供給の上でも、門前薬局のやってきたことは評価してもいいのではないでしょうか。

 

 

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門前薬局の利点

 医療業界内ではよく言われる「門前薬局不要論」しかし、医薬品供給の効率化という点ではいい役割を果たしているのではないでしょうか。

 

 通常、医療用医薬品は100錠とか500錠、1000場といった包装単位で入ってきます。その箱から処方箋に書かれている量(処方箋により使われる量がバラバラ)を取り出して患者さんにお渡しします。

 例えばマグミット錠330mgの場合1回日服用量が1錠から6錠までバラバラです。

 そのうえ、処方日数もバラバラです。一度に使われる量がバラバラです。

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添付文書の記載

 

〈制酸剤として使用する場合〉
酸化マグネシウムとして、通常成人1日0.5~1.0gを数回に分割経口投与する。

〈緩下剤として使用する場合〉
酸化マグネシウムとして、通常成人1日2gを食前又は食後の3回に分割経口投与するか、又は就寝前に1回投与する。

〈尿路蓚酸カルシウム結石の発生予防に使用する場合〉
酸化マグネシウムとして、通常成人1日0.2~0.6gを多量の水とともに経口投与する。

なお、いずれの場合も年齢、症状により適宜増減する。

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 しかも、箱から開けた場合はメーカーが起こした回収でない限りは返却できません。100条入りの包装を買って、4錠使いました。それ以降、有効期限切れまで使われることはありませんでした。この時点で仕入れた薬局は大赤字を背負います。このまま薬局で有効期限切れまで眠るので、「あるところにはあるけど、ないところにはない」「流通はしているが、全部は使い切れていない」状態になります。

 

 そのリスクを避けるために、近隣の薬局から小分けしてもらったり、チェーン薬局では支店間の譲受を行っています。

 

 医薬品卸やメーカーは納入した薬がどれだけ使われるかについての情報は持っていませんし、その情報がなくても売上に影響しないので問題ないことが多いです、

 

 先日、医師会の調査で「院内処方の医療機関の9割で処方したい薬が入ってこない」とありましたが、薬局だともっと入ってこないと考えて良いでしょう。

 院内処方の場合、自分で発注しては入荷するか否かの連絡が直接届きます、入ってこないようなら、他人からの報告を待つでなく医師の脳内で代替が決まる(妥当な処方かは別として、医師の責任での処方になる)ので、不足しても問題が表面化しにくいです。

 

 薬局の片隅で眠り、使われない薬があります。そんな薬を出さない確率が高いのは門前薬局と言えるでしょう。

 

 同じ医師の処方する薬を集中して受け入れれば、どの薬がどれだけ使われるのか予測しやすいですし、ロスも少なくなりがちです。また、処方する医師との関係性が良ければ、在庫状況を知らせることで、在庫の多そうな同種同効薬への処方変更も円滑です。

 

 

 薬局の方も、最初は門前薬局として安定した収益を上げてそこに来た患者さんの信頼を得られれば、その患者さんが他の医療機関の処方箋を持ってきます。その地域の人が処方箋を持ってきます。長期的に見て処方箋の集中率が低くなっていっていわゆる地域薬局になっていくのではないでしょうか。

 そのためには物販や近隣への配達、地域活動への参画など色々道はあります。

 

 

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インチキ治療が意外と訴えられないのは

 いわゆる「インチキ治療」ですが、意外と訴訟されていない印象があります。

 

 がんにまつわるものの場合、患者が亡くなっていることが珍しくありません。インチキに気づいたところで、治療を受けた人は帰ってきません。

 

 遺族が裁判する気力がないというのもありそうです。しかし、インチキ治療を施す人は最初は人当たりがよく、患者の話をこれでもかと傾聴します。これで「気持ちが満たされた」「気が済んだ」と思うようです。この、「気が済んだ」という要素は、死に至った場合は特に重要になります。遺族にとってはどうしても避けたいけれど避けられない死の苦しみを「気が済んだという感覚」は大きく軽減してくれます。そのため、医療としては成功しなかったけれども、気持ちを組んでくれたことへの感謝があるように思います。

 

 でも、インチキ治療が傾聴できるのは当たり前です。まずは傾聴して満足させてお金をぶんどるのが目的なのと、多くは自費治療なので、お金を多くもらえる分時間もたくさんかけられるからです。

 ほんとうは、保険診療でも患者の気持ちを満たす傾聴ができればいいのですガ、時間が取りづらいのが課題です。傾聴する時間と、患者の不安を聞き取り共感する技術をみにつける時間の両方。患者さんの怒りや不安に真っ先に共感する技術があれば、時間がなくてもある程度か患者さんの気持ちを満たせます。

 

 

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薬剤師フィールドリサーチ(126)「そもそも敷地内薬局は必要か」

 今回は2023/10/11発行の薬局新聞「薬剤師フィールドリサーチ」の記事を掲載します。

 

 敷地内薬局建設をめぐり、病院経営幹部と薬局企業経営幹部の癒着による贈収賄事件が報道されました。一般国民からしたら、どう影響するのか分かりづらいこの事件、世間の反応は薄いようです。

 「そもそも病院の中になんでわざわざ保険薬局を作る必要があるのか」という疑問が思い浮かびます。医療従事者ではない人からすれば、そこまでやるなら病院にたくさん薬剤師を雇って院内で完結したら待ち時間はあるけど行って帰るだけで薬も手元に渡るので問題ないのではないかと感じます。

 医薬分業開始当時は「医師の言うことは絶対」という風潮はかなり強かったものの、現在は医師及び患者の意識も変わり、薬のことは薬剤師にという風潮が強くなってきています。敷地内薬局を入札で建設させようとする医療機関の規模であれば、経営を挟まない分院内のほうが医師と薬剤師の関係が良好になるかもしれません。希少疾患ではその治療に詳しい医療スタッフがいたほうが知識としては安心でしょう。(患者さん個人の生活という視点では地域の薬局が適しているかもしれません)

 社会保障費の増加が国の財政を圧迫している現状、院内に薬剤師をたくさん雇えるような報酬体系を作るのは難しいのでしょう。もしそうなったとしても、実際に経営する医療機関が薬剤師の雇用に力を入れるのかどうかも不確かです。(医薬分業前の様子を見ても)

 

 

 

 

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